こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャックとジル

otello2012-01-20

ジャックとジル Jack and Jill

ポイント ★★
監督 デニス・デューガン
出演 アダム・サンドラー/ケイティ・ホームズ/アル・パチーノ
ナンバー 295
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

双子であるのを負担に感じている兄と、むしろ誇りに思っている妹。9ヶ月間一緒に子宮の中で過ごした絆は、他者からはうかがい知れないほど太く、本人同士が意識しても決して切れないほど強い。性格が正反対に育っても、どれほど離れて暮らしていても、やはり遺伝子のレベルで繋がっているのだ。映画はそんな双子兄妹が織りなすドタバタ劇と、微妙な気持ちのすれ違いが生みだす悲喜こもごもの出来事を通じて、中年になった後の兄妹の距離感を模索する。子供時代のように無邪気ではいられない、でも時にたまらなく懐かしくなる。アダム・サンドラーが社会的に成功した兄とKYゆえにイタい人生を送る妹の二役を演じるが、妹役がオッサンの女装にしか見えないのが残念だ。

LAのCMプランナー・ジャックの豪邸に妹のジルが泊まりに来る。心に浮かんだことをすぐに口にするジルは歓迎のディナーをぶち壊し、その後もジャックの家庭をかきまわす。

確かにジルはその思いも感情もすぐに吐き出し、非常識な上に平気で放屁したり下品極まりないのだが、一方でそれは裏表のない正直者の証。ジャックが毛嫌いしても、彼の妻はジルに優しく接し、子供たちは懐き、メキシコ人たちは歓迎してくれる。さらに、バスケットボールの試合会場で知り合ったアル・パシーノに一目ぼれされるなど、ジルにはジャックが気づかなかった魅力がある。双子だから似ていなければならないとジャックと思い込むジャックに対し、周囲の人々はジルの個性を受け入れている。だが、ジルの美点をジャックが発見していくように、つまり観客に理解できるように描かれていないので、いつまでたっても映像からはジルの素晴らしさが伝わってこない。

◆以下 結末に触れています◆

そして、ジャックにクルーズ旅行に誘われた理由を知ったジルは、またしてもスネてしまいひと悶着起こす。自分の置かれている立場を少しでも客観的に見られるのならば、ジャックに協力してもよさそうなのに、結局最後まで自己チュー女のまま。アル・パシーノの軽快なダンスシーンがせめてもの救いだった。

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