こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ALWAYS 三丁目の夕日’64

otello2012-01-24

ALWAYS 三丁目の夕日'64

ポイント ★★*
監督 山崎貴
出演 吉岡秀隆/堤真一/小雪/堀北真希/薬師丸ひろ子/須賀健太/森山未來/大森南朋
ナンバー 18
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

父と息子、同じ道を進むとき息子が最初に乗り越えるべきライバルであり、父にとっては陰では応援していても絶対にその姿を見られてはならない存在。一人前になるためには親を頼ってはいけないことを教えるために素直に胸の内を口にできない、そんなひねくれた父の愛情が心を打つ。映画は売れない作家が絶縁状態だった父の死を機に、息子同然に育てた少年の成長を前にして父の思いを追体験していく過程を描く。あらゆる感情がデフォルメされ、ディテールが過剰にヴィヴィッドによみがえる映像は、リアルさよりも人工的なにおいが漂う。

少年誌に執筆中の茶川は新進作家の人気に押され連載が打ち切られそうになり、挽回策を練っているうちに、父が危篤との電報が届く。鈴木オートでは従業員の六子が若い医師の菊池に恋をし、彼の自動車を修理したのをきっかけに交際を始める。

父親から勘当された身の茶川は、父の死後、どれだけ父が気にかけてくれていたかを知らされる。文学を目指す以上、退路を絶って精進せよというのが父の遺言。息子の成功を願っても憎まれ口をたたいてしまう明治生まれの男の気概を父は見せるのだが、もはや頑固というより偏屈といいっていいほど。この設定が後に茶川と養子・淳之介の間で繰り返されるのが容易に予想されるので、もうひとひねりほしかった。

◆以下 結末に触れています◆

鈴木オートの六子は菊池の悪評に悩むが、自分の気持ちに正直になろうとする。だが、ALWAYSシリーズに悪人が登場するわけもなく、少し遠回りするけれど結局明るい未来が待っている。敗戦の焼け野原からたった19年で人々が希望に満ちた暮らしを送れるようになった東京、充実した人生とは日々の生活を精いっぱい生きたうえで夢を追いかけることと信じていられた。バブル崩壊から20年近くたってもなお先行きが見いだせない現代の日本と比べると、物質的な豊かさは決して幸せには直結しない事実をあらためて思い出させてくれる。

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