こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファミリー・ツリー

otello2012-01-28

ファミリー・ツリー THE DESCENDANTS

オススメ度 ★★★*
監督 アレクサンダー・ペイン
出演 ジョージ・クルーニー/シャイリーン・ウッドリー/アマラ・ミラー
ナンバー 21
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

妻や娘たちのことを何も知らなかった、彼女たちの心を全然分かってやろうとしなかった。長年惰性のように続いていた平凡だが平穏な日常が突然壊れたとき、男は初めて深い溝に気づく。そして溝を埋めようとするが妻はもう答えてくれない。ならばせめて真実を突き止めて己を顧みる材料にしようとする。映画は、そんな主人公が娘たちと妻の隠しごとを探る途中で、いつの間にか失っていた家族の絆を取り戻していく姿を描く。その過程はそこはかとないアイロニーとペーソスが漂う一方でコミカルに味付けされ、深刻な話なのにユーモアに満ちている。それは、ハワイが持つ、太陽と海と温暖な気候がもたらす自然の恵みでもあるのだ。

水上事故で昏睡状態に陥ったエリザベスを看病する夫のマットは、2人の娘・アレックスとスコッティに手を焼いている。ある日、アレックスにエリザベスの密会を目撃したと言われ、マットは妻の浮気相手・スピアーを見つける決意をする。

父親にかまってもらえない娘たちは汚い言葉やしぐさを覚え、彼女たちを躾けても無視されるマットの狼狽ぶりがリアルで胸をくすぐられる。さらにモノ言わぬエリザベスには散々悪態をつくのにアレックスの悪態には口うるさいという矛盾が笑いを誘う。親と距離を取っていてもきちんと両親を観察し、親の身勝手には反発する娘たちの気持ちと、マットの独りよがりのすれ違うテンポが小気味よく、そこにアレックスの友人・シドがとぼけた空気を加え絶妙の味わいと余韻を残す。

◆以下 結末に触れています◆

スピアーを探す道程は父娘の親密感を劇的に縮め、アレックスはマットに耳を貸すようになり、スコッティも素直になっている。結局、エリザベスとは隙間をつめられないままだが、夫婦の秘密と未来を方向づける旅は確かな愛に昇華され、父娘3人が一枚の毛布を膝に掛けてTVを見るシーンに親子関係の再生が凝縮されていた。妻の裏切りに対する怒りと、思いを伝えられなかった後悔、多少は不満が残っているが人生を肯定するマットの脱力した表情が印象的だった。

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