こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

しあわせのパン

otello2012-01-31

しあわせのパン


オススメ度 ★★
DATE 12/1/27
THEATER THYK
監督 三島有紀子
出演 原田知世/大泉洋/森カンナ/平岡祐太/光石研/八木優希/中村嘉葎雄/渡辺美佐子/あがた森魚 /余貴美子
ナンバー 23
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ひっそりと湖畔に佇むカフェは訪れる人の悩みを忘れさせ、胸の痛みを癒し、懐かしい記憶を甦らせる。人のいいオーナー夫婦と隣人に、凝り固まっていた客の気持ちは徐々にほぐされ、店を後にするときはすっかり笑顔を取り戻している。映画は、そこに集う人々の喜怒哀楽をすくい上げながら、人生を急がないことの大切さを訴える。地元で採れた野菜を丁寧に調理し、一つずつ手でこねたパンを焼き、コーヒーを豆から挽く。すべてがゆったりと流れる時間の中でこそ、思いやりが生まれ幸せを感じられるのだ。

東京から北海道に引っ越し、カフェ・マーニを開いたりえと水縞。夏のある日、恋人にふられたカオリがやってくる。カオリは地元の青年・トキオに東京暮らしの愚痴を垂れるうちに彼と意気投合していく。

緑の濃さ、空の高さ、水の深さ、鮮やかな野菜の彩、星のきらめき、雪のまぶしさ。せっかく北海道の大地を舞台にしているのに、自然の美しさを再現しないのはなぜだろう。霞がかった映像ではこの地の澄み渡った空気を実感できず、むしろ白内障の老人が見た風景のよう。はたしてカオリが持ち込む騒動も原因が幼稚すぎるうえ、彼女の行動や思考も突飛でとても共感できず、無理な設定ばかりが空回りする。北海道で沖縄みやげを探すにしても、もう少しコミカルな味付けがあれば楽しめたが。。。

◆以下 結末に触れています◆

その後、秋には孤独な少女を迎え、冬には老夫婦が宿泊し、それぞれが抱えたわだかまりを解いていく。きっかけはりえの料理と水縞のパン、おいしい食べ物が感情を豊かにし前向きに生きる力を与える。だが、結局りえと水縞が東京を逃げ出してきた理由は明かされず、抱えていた問題も提示されない。「たくさんのたいへん」といっても具体的にはどんなトラウマがあったのかスルーするために、りえと水縞のキャラクターが全く見えてこないのが残念だった。まあ、他人の事情には深く立ち入らなくても、自慢の食事とホスピタリティで心のトラブルを解決するのがりえと水縞の流儀と思えば、彼らの過去を詮索するのは野暮なのかもしれないが。。。

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