こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

犬の首輪とコロッケと

otello2012-02-06

犬の首輪とコロッケと

オススメ度 ★★
監督 長原成樹
出演 鎌苅健太/ちすん/中村昌也/宮下雄也/池田純矢/波岡一喜/宮地真緒
ナンバー 27
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ケンカ話に花が咲くチンピラがトイレで血祭りにあげられる導入部は、この物語の主人公がどれほどの腕っ節を持った強い男なのかを予感させ、期待に胸が膨らむ。そこには、小学生のころから窃盗やイタズラを繰り返し、中学を卒業するころには一端のワルを気取っている、そんな彼が生まれた生野という町の“昭和の空気”が濃密に凝縮されていた。映画は在日韓国人の少年が、恋人との出会いをきっかけに更生し、漫才師を目指す姿を描く。だが、エピソードが散漫で前後ろのつながりがぎこちなく、ストーリーの流れが悪いのが欠点。ところどころにちりばめられた一発ギャグ風のシーンは大いに笑えたが。。。

チョンコーとチョッパリが毎日のように小競り合いを繰り返す町に生まれ育ったセイキは、チョンコーのリーダー格になるが、いつしかチョッパリのリーダー・ヤマトと仲良くなる。ある日、2人でアベックを襲うが、逃げ遅れたセイキは捕まり少年院に収監される。

出所後、美智子というOLを紹介されたセイキはたちまち恋の落ち、美智子の両親に挨拶に行くが、“少年院上がりの在日”と言われ追い返される。セイキは一念発起してカネを稼ごうとするがまともな職には就けず、幼なじみのタツと吉本に入って漫才師を目指す。ところが、この物語の根底に流れているのは在日コリアンに対する差別や偏見のはずなのに、あまりそこに踏み込もうとはしないのはなぜだろう。芸人になるのに国籍は関係ないが、一方でアイデンティティに悩むセイキの姿を描いていればもう少し違った印象になったはずだ。また、少年時代のエピソードをはじめ美智子とのデート、大人たちなど他のキャラクターを含めてみな人物像の掘り下げが甘く、ほとんど感情に訴えてこない。

◆以下 結末に触れています◆

やがて、セイキとタツの漫才コンビは人気が出て新人賞を取るまでになるが、その間、美智子との別れ、父の思いなどを経験しながらセイキは人間として成長を遂げていく。自分の生きる道は芸人しかないとばかりに、街頭で漫才を披露するセイキとタツの話芸は、哀しみを乗り越えた分深みがこもっていたことが救いだった。

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