こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

忍道

otello2012-02-10

忍道

オススメ度 ★★
監督 森岡利行
出演 佐津川愛美/ユキリョウイチ/菊地あやか/尚玄/黒沢年雄/研ナオコ/長谷川初範
ナンバー 293
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

女が初めて魅かれた男は一族の敵だった、男が気を許した女は抹殺すべき相手だった。お互いが正体を知らずに愛し合い、引き裂かれ、傷つけあう。追うものと追われるもの、人目を避け素性を隠し生き残るために殺さなければなければならない男と女、物語はそんな裏社会の人々の悲しい運命を描く。手裏剣を投げ、剣を振りかざし、屋根を走る、映画は日光江戸村のセットを使い忍者アクションを再現しようとするが、撮影用ではないのか、カメラワークに躍動感がなく平板な印象を残す。CGで血しぶきを飛ばすなどの工夫はあるが、もうひとひねりアイデアを盛り込んでほしかった。

江戸末期、幕府の目から逃れるために山里深く隠棲する忍者たちは、敵対組織・黒羽衆の動向を探ろうと街に女忍者・澄乃を送り込む。澄乃はお里と名乗って飲み屋で働き始めるが、酔客・東五郎の娘を助けたことから彼と親しくなる。

忍者たちが毛皮を着て質素なテント暮らしをしているのが笑える。すぐに逃げられるような実用的工夫だが、まるで縄文人の村のよう。一方の黒羽衆は高度な武闘訓練を受け、武具だけでなく拳銃や小銃まで持っているのとは対照的だ。幕府という後ろ盾を失った忍者たちは、粗末な住環境の中で脅えながら生活している、それでも外部との接触を断ち忍びの技を伝承しようとしている。そのあたり、彼らがなぜ忍者として生きなければならないのか説明がなく、どういう思考回路なのか不明。たとえば忍者の身分を捨てると被差別身分に落とされ苦役を強いられるなど、封建社会ならではの掟を盛り込めば説得力も出たはずだが。

◆以下 結末に触れています◆

そうかと思えば、澄乃の妹分が黒羽衆の罠にはまるとあっさり里の場所を吐いてしまうなど、忍者の自覚がないのも甚だしい。クライマックスの忍者対黒羽衆の戦いで、やっと自由に動き回れるようになったカメラがダイナミックな映像を見せてくれるのが救いだが、もう少し脚本の段階から丁寧に作るべきだろう。

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