こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

長ぐつをはいたネコ 

otello2012-02-18

長ぐつをはいたネコ PUSS IN BOOTS

オススメ度 ★★★
監督 クリス・ミラー
出演
ナンバー 32
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

軽やかに宙を舞い、目にもとまらぬ速さで剣をさばき、情熱的なステップを踏む。さらにアニメーションだからこそ表現できるスピーディな動きとCGによる圧倒的な情報量は、3Dとの相乗効果で息つく間もないほどのアクションを展開。めくるめく映像は、いつしか時間を忘れさせ見る者をおとぎ話に導いてくれる。だがそこは、悪意と邪念が渦巻く無国籍ウエスタン風の世界、冒険に生きる主人公を待ち受けるのは、欲望や怨念といった人間的な感情だ。映画は、さすらいの雄ネコが幼なじみの夢を叶えるために一肌脱ぎ、剣術の腕前と身軽さと行動力で、勇気と友情を示していく姿を描く。

お尋ね者のネコ・プスは酒場で、ジャックとジル夫婦が魔法の豆を手に入れたというネタを耳にする。プスは豆を奪おうと夫婦の寝室に忍び込むが、黒マスクの怪盗・キティに邪魔をされ失敗、後を追ううちにかつての親友ハンプティと再会する。

プスとキティが見せるダンスバトルが胸躍る。フラメンコの激しさとバレエのしなやかさ、力強さと優雅さが交じったオリジナリティあふれるシーンは思わずリズムを取ってしまいそうになった。その後、天空の国から永遠の富を約束する金の卵を盗み出す計画を聞かされたプスは、キティ、ハンプティらと共に、奪った豆から伸びた枝を伝って雲の上に辿り着く。

◆以下 結末に触れています◆

プスは向う見ずなところもあるが大胆で危険を愛し、キティは盗みの腕がピカイチ。甘えるしぐさ、怒った眼差し、ウルウルとした瞳など、本物のネコの挙動を非常にリアルに再現してネコと人間のキャラクターの融合に成功している。またタマゴのハンプティも表情豊かで、愛嬌があるかと思えば暗さも抱えている。このあたりの設定はいかにも子供が喜びそうな造形で、懐かしいおもちゃで遊んでいるような錯覚に陥った。そして、予想もしなかった裏切りとどんでん返しのあと、最後には良心と自己犠牲で町の人々を救う物語の流れの中でアイデアあふれる壮大な活劇が繰り広げられる。そんな、サービス精神の満ちた作品だった。

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