こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドライヴ

otello2012-02-19

ドライヴ DRIVE

ポイント ★★★*
監督 ニコラス・ウィンティング・レフン
出演 ライアン・ゴスリング/キャリー・マリガン/アルバート・ブルックス/オスカー・アイザック
ナンバー 40
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

常に冷静に判断を下し、決して目立とうとはしない。いつも微笑みを湛えた口元は何を考えているのか予想させず、眉間に寄せる皺がわずかに彼の胸中を推測させる。寡黙で誠実、己の行動規範を忠実な主人公に扮するライアン・ゴスリングは、抑制の効いた演技でクールな魅力を放つ。映画は、超絶ドライブテクニックを持つ男が悪党の罠にはめられたことを知った時、暴力の炎を燃え上がらせる姿を描く。自分の命と愛する者を守るため、そして裏切りの借りを返すため怒りを爆発させるが、それでもあくまで気持ちを表出させるのは瞳の光と真一文字に結んだ口のみ。そんなミニマムな表現がスタイリッシュな映像にちりばめられている。

昼間は修理工とスタントマン、時折強盗の運転手を務めるドライバーはアパートの同じフロアに暮らすアイリーンと知り合う。彼女の息子にもなつかれ、次第に親密になっていくが、出所した夫・スタンダードの質屋強盗を手伝った挙句、自身とアイリーン母子に危険が及ぶ。

逃走を助けても他人の物を盗まない、アイリーンと親密になっても夫の帰りを待っている彼女には手を出さない、必要以上に他人とかかわろうとしない。だからこそドライバーは自らのルールを最優先させる。そのキャラクターは謎だらけだがシンプル。畳み掛けるテンポのアクションとは一線を画し、ゆったりと間をとった演出はドライバーの思考と感情を観客の心に染み渡るのを待つかのようだ。一方で、血にまみれたバイオレンスは意識の下に入り込むような不思議な感覚で苦痛を直接的に伝えてくる。

◆以下 結末に触れています◆

やがて質屋強盗を裏で操っていたマフィアの存在に気づき、ドライバーは復讐に転じる。武装したチンピラを返り討ちにしマフィアの手下を血祭りに上げていくシーンは、派手な飛び道具や格闘術よりも意志の力が武器となる。恐怖を知らない大胆さ、準備を怠らない繊細さ、敵を確実に仕留めていく沈着さ、もはや悪魔の域に達し、流した血だけが彼を人間だと思い出させてくれるのだ。

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