こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

昼下がり、ローマの恋

otello2012-02-22

昼下がり、ローマの恋 Manuale d'am3re

オススメ度 ★★★
監督 ジョヴァンニ・ヴェロネージ
出演 ロバート・デ・ニーロ/モニカ・ベルッチ/リッカルド・スカルマチョ/ミケーレ・プラチド/カルロ・ヴェルドーネ
ナンバー 42
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

若者は未来を信じて己の直観に従い、中年男は自分探しの旅に出て、老人は残り少ない時間を愛情に生きる決意をする。3世代・3人の男たちは恋をきっかけに新しい世界に踏み出し、それぞれの愛に立ちはだかる障害を乗り越えて得られる充足感に幸せを覚えていく。映画は、そんな男たちの、日々の暮らしにおける大切なものは何か探る過程を軽妙に描く。そして、あらゆる会話で大げさな身振り手振りを交えて気持ちを伝えんとするいかにもイタリア的な登場人物の所作が、人間同士が理解し合い信頼を勝ち取るためにはすべてをさらけ出さなければならないと教えてくれる。

老夫婦を農場から立ち退かせようとする弁護士のロベルトは、田舎の村の美女・ミコラに心奪われる。ニュースキャスターのファビオはパーティで知り合ったエリアーナに誘惑される。老学者のエイドリアンは友人の娘・ビオラを匿ったことから彼女と一夜を共にする。

3つの物語のうち、ファビオのエピソードが特に秀逸。謎めいているが積極的なエリアーナとの情事に、社会的地位と家族の絆を汲々と守っていたファビオが大いに浮かれた気分になる。エリアーナはファビオ自身を抑圧してきた心理的圧迫感のシンボルであるカツラをはずして彼を解放し、素のままのファビオに戻してやるが、その際の周囲の反応には腹を抱えてしまった。やがて、彼女の正体が明らかになるにつれ2人の関係はシリアスになっていくが、そこでもあくまでファビオのマヌケぶりに焦点を当てるため、皮肉に満ちた教訓も前向きな印象で受け止められた。

◆以下 結末に触れています◆

弁護士としての成功、仕事と家庭、移植した心臓、3人の主人公たちは心を縛ってきた要因をすっきり取り除いて思い切った行動に出る。3人はひとりの男の人生の象徴なのだろう、人の一生には3度の転機があり、そのタイミングを逃さずにアクションを起こす覚悟を持つ者だけが幸せをつかむことができるのだ。

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