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世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶

otello2012-03-05

世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶
CAVE OF FORGOTTEN DREAMS

ポイント ★★*
監督 ヴェルナー・ヘルツォーク
出演
ナンバー 55
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

天井から垂れ下がる鍾乳石の真下で地面から石筍が背を伸ばし、お互いの先端が触れんとする様は、自然における悠久の時間の流れを象徴する。そんな洞窟に残された動物の絵は写実性に富み、壁につけられた数十の赤い手形は、そこには確かに人間の営みがあった事実を物語る。それは見たこと感じたこと考えたことを誰かに伝えたいという思い、石器時代のアーティストのメッセージは、おぼろげながらも21世紀に生きる我々にも受け止めることができるのだ。輪郭ははっきりとした線で、壁の曲面を利用した濃淡の影で立体的に表現された馬やサイ・バイソンたちは、いまにも走り出さんばかりの躍動感に満ちていた。

1994年南仏、入り口がふさがれた洞窟の奥深くで壁画が発見される。その後洞窟は厳重に保護されるが、数名の研究者とともにカメラと照明を携えたクルーが撮影を許可される。スタッフは32、000年前のアートに衝撃を受ける。

壁画が描かれた年代には5,000年ほどの幅があり、動物の種類から、その間氷河期から亜熱帯までの気候変動をこの地方の石器人は経験しているのだろう。絵の上に別の絵を加え技法も洗練されていくうちに、おそらく100世代を超える祖先を精霊として身近に感じていたに違いない。現代の研究者たちは彼らの生の声を拾おうと壁画を精細に分析し、彼らが何を考えていたのか、どんな暮らしをしていたのか想像を巡らせ仮説を立てる。その過程は文化を持つ動物・人間のルーツを探る旅でもあるのだ。

◆以下 結末に触れています◆

一応洞窟内の目立った壁画の記録はできたもののほとんど自由に動き回れなかったカメラは、そのストレスを発散させるかのように洞窟の外では切り立った崖に沿って舞い上がり、川に架かったアーチ形の天然巨岩をくぐりぬけ、大空から洞窟周辺を俯瞰する。先史時代の精霊たちが見た風景を追体験しているのか、重力から解放された視点の映像は過去という壮大なイマジネーションに見る者をいざなってくれる。ただ、最後に原発アルビノワニなどを出して環境問題に言及するが、論点がずれていて蛇足感が否めなかった。

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