こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ワンドゥギ

otello2012-04-17

ワンドゥギ

オススメ度 ★★*
監督 イ・ハン
出演 ユ・アイン/キム・ユンソク/パク・スヨン/イ・ジャスミン/キム・サンホ
ナンバー 90
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

貧しい暮らしの中でも必死に稼ごうとする父、口は悪いが面倒見のいい先生。大人たちが生活を守るために働き、自分にきちんとした人間になってほしいと思っているのは分かっている。だが少年は彼らの態度がウザくてしょうがない。そこには己の気持ちを素直に言葉にできない男同士のギクシャクした壁があって、それを壊せるのは女しかいない。映画は物事が思い通りにならずいつもイラついている高校生が、母との再会を通じて父や先生の思いをくみ取っていく過程を描く。ひとりは淋しい、男だけでもどこかぎこちない。男と女、相手を慮る心があって人間関係は円滑に進むのだ。繁栄から取り残された大都会の片隅で生きる人々の姿がたくましい。

キャバレー芸人の息子・ワンドゥクは、学校では担任のドンジュに目を付けられ、家に帰っても向かいの屋上屋に住むドンジェにいちいち干渉される。ある日、生き別れになったフィリピン人の母が会いたがっているとドンジェから聞かされる。

突然目の前に現れたまったく記憶にない母。初めて見た母は奥ゆかしく礼儀正しく、今までに出会わなかったタイプ。ワンドゥクに負い目を感じているのか敬語を使っている。どう接すればよいかわからなかったワンドゥクも何度も会ううちに胸襟を開き、逆に彼女のボロボロの靴を見て新しいのを買ってやったりする。さらにクラス1の優等生をガールフレンドにして、人生も捨てたものではないと思えるようになる。きっかけは何でもいい、誰かに必要とされれば人は前向きになれるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ワンドゥクはドンジェに誘われてキックボクシングを始め、ケンカで鍛えた闘争心を発揮する。今さらエリートコースに乗るのは不可能、それでもやりたいことを見つけ打ち込めば、父やドンジェのようにカネに無縁でも充実した日々を送れるのではないか。試合に臨む彼の瞳に宿る希望が、明るい未来を象徴していた。

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