こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

崖っぷちの男

otello2012-04-28

崖っぷちの男 Man on a Ledge

オススメ度 ★★★*
監督 アスガー・レス
出演 サム・ワーシントン/エリザベス・バンクス/エド・ハリス/ジェイミー・ベル
ナンバー 102
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

覚悟を決めた行動も、激情に駆られた暴走も、予定通り。己の無実を証明するために練りに練った計画と周到な準備のもとで実行に移される。映画はビルの外壁の縁に立った主人公が、見守る群衆とTVカメラの前で身の潔白を訴えつつ、失意の底にいる女刑事と駆け引きする姿を描く。男の発する言葉ひとつひとつに込められた別の意味と高層階から見た足がすくむような光景、徐々に明らかになっていく男の真意と茶番の陰で繰り広げられる手に汗握る侵入劇。スリルとサスペンスにミステリーとアクションがほど良く配合された二転三転する展開に、スクリーンから目が離せなかった。

目抜き通りに面したホテルの窓の外に出て自殺をほのめかすニックは、警察側の交渉人にリディアを指名する。ニックの指紋を入手したリディアは、彼がダイヤ横領罪で服役中に脱獄した元警官であると知る。

飛び降りると見せかけて巧みに野次馬の関心を集め、時間を稼ぐニック。説得するリディアに情報を小出しにし、内務調査の結果を洗い直させて濡れ衣を晴らそうとする。買収された警官は誰か、リディアの直感は現場にいる者に向けられ、ニックの意図に気付いた悪徳警官はニックを消すために強行突入を主張する。そのあたり、外壁の縁で硬直していた映像が突入部隊の登場でいきなりダイナミックに動きだす、この転換が鮮やかで思わず引き込まれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

並行してニックの弟・ジョーイと恋人・アンジーが向かいのビルにある警備厳重な金庫から疑惑のダイヤを盗み出そうとする。幾重にも張り巡らされたトラップをかいくぐり、難攻不落のセキュリティの裏をかく過程はそれだけで一本の作品ができるのではと思わせるクオリティ。すべては自分を嵌めた男に復讐するためというニック側に正義があるがゆえの犯罪なので、監視カメラに静止画をはめこんだり温度センサーを消火器で冷却したりといった彼らの鮮やかな手口に快哉を叫びたくなる。もちろん大ジャンプにも。。。

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