こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

テルマエ・ロマエ

otello2012-04-30

テルマエ・ロマエ

オススメ度 ★★*
監督 武内英樹
出演 阿部寛/上戸 彩/北村一輝/竹内力/宍戸開/笹野高史/市村正親
ナンバー 105
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

公衆浴場での入浴をこよなく愛し、様々な建築物を遺した古代ローマ人。欧州ではすっかり廃れてしまったのに、日本では現代でも心と体の癒しの社交場として維持されているだけでなく、各家庭に設置された内風呂も完成度は高い。そんな、独自の発展を遂げた日本の風呂文化は2000年前のローマ人の目にはどう映るか。映画は、21世紀の日本に紛れ込んだローマ人技師が、あまりの技術力の差に途轍もない敗北感にさいなまれながらも、アイデアを盗んでローマ風にアレンジする過程を描く。主人公の驚きはそのまま欧米人のカルチャーショックでもあるが、普段普通に使っている浴室や浴場も改めて理論的な言葉で分析されると、過剰なまでに追及された機能性と快適性は滑稽であるとともに誇りにも思えてくる。

ハドリアヌス帝治下のローマ、浴場設計技師のルシウスは入浴中に排水溝に潜り、老人ばかりの銭湯で気が付く。彼はそこが“平たい顔族”が住むローマの属州と勘違いするが、洗い場や脱衣所の洗練されたシステムに衝撃を受け、さっそくローマの浴場に取り入れる。

ディテールを大胆に省略したうえで登場人物の心情を大げさに表現した教養バラエティの再現映像のようなタッチで描かれる古代ローマパートが、人を食った雰囲気を醸し出す。ドラマ性やリアリティよりもわかりやすさに徹してルシウスが置かれている状況を説明していくのだが、チネチッタのオープンセットで撮影されたというスケール感を逆手に取った安っぽさがかえって新鮮だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、ローマの政争に巻き込まれたルシウスは、日本からタイムスリップしてきた真実と彼女の父・友人らの協力を得て、前線基地に湯池場を作る。おかげで苦戦中のローマ軍は大勝利、皇帝から表彰される。だが、のんびりまったりの平和的な温泉文化が、軍事利用されるのにはいささか違和感を覚える。少なくとも善良な日本の民間人に戦争の片棒を担がせることはなかったはずだ。。。

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