こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロボット

otello2012-05-15

ロボット ENDHIRAN THE ROBOT

オススメ度 ★★★★
監督 シャンカール
出演 ラジニカーント/アイシュワリヤー・ラーイ
ナンバー 119
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

疾走する列車での大乱闘、業火に見舞われたビルで逃げ遅れた人々を背負ってジャンプする救出劇、暴走するオープンカーとパトカーのカーチェイス、ミュージッククリップのような艶めかしい歌とダンス、さらに球体からドリル・大蛇にまで自由に形態を変えるロボット集合体との最終バトル、惜しげもなく繰り出される山場の波状攻撃にアドレナリンが止まらない。映画は100%娯楽という信念の下、映画史に残る様々なアクション映画のエッセンスを吸収したうえで換骨奪胎し、見事なエンタテインメントに昇華している。そのパワーとスピード、サービス精神は目くるめく映像となってスクリーンに投影され、気が付けば思考停止のまま2時間20分が過ぎていた。

10年の歳月をかけてロボットを完成させたバシーはチッティと名付けるが、人間の心までは再現できずにいた。試行錯誤するうちに雷に打たれたチッティは感情を手に入れ、バシーの婚約者・サナに恋をする。

サナのキスが忘れらないチッティは、サナの歓心を得るために献身的に彼女に尽くすが、サナのバシーへの気持ちは変わらない。やがてチッティに芽生えた嫉妬は、バシーのライバルの謀略で怒りと憎しみに成長していく。その過程はある種コミカルなのだが、本質は決して甘いものではなく、大勢の人が暴力に血にまみれなり銃弾の餌食になっていく。その後、軍隊まで動員されると、ロボット対人間の戦争となる。チッティはもともと代用兵士向けに開発されたロボット、このあたり近隣核保有国と緊張状態が続く軍事国家・インドの素顔がうかがえる。優秀なIT技術者は新たな発明を軍事転用する機会を常に念頭に置いているのだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

バシーに敗れたチッティは裁判の判決を受け入れる。バシーとの別れのシーンでは、溶鉱炉の中に消えていったターミネーター同様、彼もまた人間がなぜ涙を流すのか理解したはずだ。感情、この厄介な心の動きこそ人間であることの証しであり、それを身につけてしまったチッティの哀しみが胸に沁みた。

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