こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

君への誓い

otello2012-06-04

君への誓い THE VOW

オススメ度 ★★★
監督 マイケル・サシー
出演 レイチェル・マクアダムス/チャニング・テイタム/サム・ニール/ジェシカ・ラング
ナンバー 136
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あれほど喜びを共有したのに、彼女は自分を覚えていない。さらに、共に過ごした時間はすっぽりと抜け落ちているのに出会う以前は鮮明に思い出せることが彼を苛立たせ、落胆させる。物語は交通事故で脳に損傷を受けた妻と暮らす夫が、もう一度彼女の失われた感情を取り戻そうと努力する姿を描く。愛とはかけがえのないふたりだけの瞬間の積み重ね、その共通認識の土台が崩れたときどうすればいいのか。献身的になるほど妻との距離が開いてしまう夫の胸中と、“見知らぬ他人”がいきなり夫となる妻の戸惑いがリアルに再現される。己の思いを押し付けるばかりではなく、相手の立場になって考えても埋められない溝は残る。甘いラブロマンスの衣の奥に運命の過酷さが潜んでいる作品だった。

レオとペイジはデートの帰りにトラックに追突され重傷を負う。昏睡から目覚めたペイジは最近4年間の記憶を失くしレオが誰だかわからない。レオは彼女を回復させようとするが、環境の変化にペイジは混乱していく。

一方で父と喧嘩して家出したのも忘れているペイジは、見舞いに来た両親とすっかり打ち解けている。両親はこの機を逃すまいと親子仲の修復を図り、ペイジ自身も楽しかった思い出に浸るようになる。もはや彼女の人生からは“なかった男”にされてしまったレオは、失望を隠しきれない。それでも何とかできるはずと諦めないレオの、すがるような視線が哀しくも純粋な美しさを湛えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もちろんペイジも頭ではレオが夫であるとわかっている。しかし彼を愛していた確信が持てず、それ以上に別れた婚約者に惹かれてしまうなど、気持ちをコントロールできずにもがいている。結局、ペイジのの4年間は空白のまま。だが、レオが正直に、そして真剣に“現在の私”を愛しているのははっきりと理解する。元に帰ろうとするよりも、これからまた新しい関係を築き上げればきっと願いはかなう、そう信じさせるラストシーンが希望をもたらしてくれた。

↓公式サイト↓