ファウスト FAUST
オススメ度 ★★
監督 アレクサンドル・ソクーロフ
出演 ヨハネス・ツァイラー/アントン・アダシンスキー/イゾルデ・ディシャウク/ゲオルク・フリードリヒ/ハンナ・シグラ
ナンバー 138
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
魂はどこに宿るのか、いくら新鮮な死体を切り刻んでも見つからない。神は実在するのか、教会に通っても確証は得られない。だが、悪魔というフィルターを通して世の中を見たとき、魂や神は姿を現さなくても人の心に濃い影を落としていく。映画は学問に生業とする“教授”が、究極の問いの答えと人間の真実を求めて彷徨する様子を描く。なぜ生まれ何のために生きるのかを追求した結果、酒に溺れ姦淫にふけることが人生の楽しみと教えられ、学究から解放されてもなお苦悶する主人公。カメラは彼の感情を丁寧に掬い取りリアルに再現する。ただ、暗い画面が見づらい上、言葉に込められたメタファーが不条理のスパイラルとなり、この作品をより難解にする。
研究に生涯を捧げたファウストは毒を飲んでも死なない高利貸しのミュラーに借金を申し込むが断られ、その代わりミュラーに洗濯場に案内される。そこでファウストは美しい娘・マルガレーテに惹かれていく。
冒頭、“視点”が天から降ってくる。荒涼とした大地にしがみつくような小さな町に舞い降りて、“視点”はファウストのそばに寄り添う。それがとらえるファウストの日常は、時に歪み時にピントがずれ時に光量不足でボケてしまう。神と呼ぶには不安定、第三者にしては実体がない。それこそファウストが探し続けた“魂”なのだろう。しかも彼自身の。足が地につかず浮遊感に満ちた映像は、確固たる真実など人間の世界にはなく、確実なのは“死”だけであると訴えているようだった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがてマルガレーテを手に入れようとするファウストは、ミュラーがさしだす悪魔の契約書にサインする。その後冥界の入り口でミュラーを殺そうとするが、結局ファウストは借りを背負ったまま生きなければならない。そこに至る過程の、あらゆるカットやセリフに何らかの意味が込められているのはおぼろげながら理解できるが、それは決してイマジネーションを刺激する類のモノではなく、最後まで物語の本質が見えてこなかった。。。