こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

そして友よ、静かに死ね

otello2012-07-11

そして友よ、静かに死ね LES LYONNAIS

オススメ度 ★★★
監督 オリビエ・マルシャル
出演 /チェッキー・カリョ/ダニエル・デュバル/ディミトリ・ストロージュ/パトリック・カタリフォ
ナンバー 169
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

親友と信じて疑わなかった相棒が、今は裏切り者として組織と警察に追われている。彼を助けられるのは自分しかいないと悟った時、男は身を引いたはずの血なまぐさい世界に戻っていく。友情か己の人生かの選択を迫られ、友情を選び再び手を汚す決意をするまでの苦悩がリアルだ。そして流血の果てに相棒と再会したにもかかわらず、嬉しさや懐かしさよりも厄介事に巻き込まれてしまった不満を呑み込もうとする表情が印象的。映画は、そんな主人公が相棒との記憶を振り返りつつ、知りたくなかった真実を知らされた末、新たな懊悩を抱え込む姿を描く。

引退したギャングのボス・モモンのなわばりにかつての相棒・セルジュが13年ぶりに帰ってくるが、張り込んでいた警察に逮捕される。初めは無関心を装うモモンだが、部下に突き上げられセルジュの奪還を黙認、隠れ家に匿う。

スペインの麻薬密売組織につけ狙われているセルジュを預かったことで、モモンは麻薬組織を敵に回す羽目になる。刑事に嗅ぎまわられ組織の殺し屋の影が忍び寄る中、モモンの身辺はあわただしくなっていく。その渦中、幼少のころいじめられていたところを救われ、チンピラ時代は一緒に臭い飯を食い、街のボス一味を一掃してからは命を張って強盗を繰り返したセルジュとの思い出が蘇る。だがそれは次第にモモンの判断を鈍らせていく。仲間同士の信頼がすべての裏社会の掟、いくら足を洗ったつもりでも、過去という烙印は永遠に消えない。モモンを演じたジェラール・ランバンはあくまで抑制の効いた演技で彼の感情を表現する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてモモンは麻薬組織の黒幕を洗い出し、決着を付けスペインに飛ぶ。そこで告げられた意外な事実とセルジュへの疑惑。さらに警察から思わぬ調書を見せられた際のモモンの絶望。心に大きな穴が開いてもやるべきことはやらなければならない、銃弾と暴力に生きたギャングたちの哀しき宿命が荘厳なレクイエムとなってこだまするような作品だった。それにしてもプラスティック製のクレジットカードでも立派な武器になるとは。。。

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