こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スリープレス・ナイト

otello2012-07-14

スリープレス・ナイト Nuit blanche

オススメ度 ★★★
監督 フレデリック・ジャルダン
出演 トメル・シスレー/ジョーイ・スタール/ジュリアン・ボワッスリエ/ロラン・ストーケル
ナンバー 172
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

孤立無援、四面楚歌、絶望的な状況でひとり息子を救出しようとする男。駆け引きと裏切り、知略と暴力が渦巻く夜の巨大飲食遊興施設、ギャングと捜査員を相手に、逃げ、隠れ、交渉し、反撃する。映画はそんな主人公の一挙手一投足に密着し、彼の怒りと焦燥、苦痛と疲労そして愛と憎悪を荒々しく激しい息遣いと共に再現する。人質を取られている弱みから強硬な手段には出られない、人ごみに紛れ、時間を稼ぎ、なんとか解決策を模索する過程はスリルにあふれ、極限まで肉体を駆使した格闘シーンはリアルな痛みを伴っていた。

ギャングからコカインを強奪した刑事のヴァンサンは、逆に息子を拉致されて、コカインの返還を迫られる。ヴァンサンは取引場所トイレの天井裏に一旦コカインを隠すが、それを張り込み中の女刑事が持ち去ってしまう。

コカインがなくなり、その場しのぎの嘘とハッタリで息子を取り戻そうとするヴァンサンは、当然ギャングから追われる立場になる。一方で、ヴァンサンとは別にコカインの横取りを企む麻薬捜査官はヴァンサンの相棒を陰で操っている。頼れるのは己の経験と判断力だけ、疲れ果て傷だらけになりながらも考え、闘い、息子を探す。しかしヴァンサン自身も悪党であることに変わりない上、善良な不法移民を警察バッジで脅してこき使う小賢しさをみせるなど、見る者の感情移入を拒む。それゆえ息子を無事に保護しなければならないという思いがより強調され、ヴァンサンのキャラクターに人間味を与えている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ダンスフロアのほかにもレストラン、バー、カジノ、ビリヤード場まで設けられた建物内部は迷路のように渾然と入り組み、全体像が把握できない。また大勢の客や従業員がヴァンサンの進路を邪魔するが、時に身を守る盾にもなる。もどかしくもあり、事を有利に展開したりもする舞台設定が非常にユニークで、その中で一晩中走り続けるヴァンサンのタフネスをスピーディに描き切っていた。

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