こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

眠れぬ夜の仕事図鑑

otello2012-08-01

眠れぬ夜の仕事図鑑 ABENDLAND

オススメ度 ★★
監督 ニコラウス・ゲイハルタ
出演
ナンバー 190
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人が寝静まった深夜、暗視カメラを乗せたバンが広い草原にレンズを向ける。空き地を占拠する不法移民に役人は立ち退きを迫る。保育器に入れられた新生児室の未熟児をナースは夜通し見守る。そこには昼間の喧騒とはまったく異なる顔を見せる世界の住人がいる。カネのため、法を守らせるため、人のため、社会のため、仕事を始めた動機はそれぞれだろう。そんな“真夜中に働く”人々にスポットをあて、よく知られた職業から地味で目立たぬ作業に従事する姿に密着する映像は、音楽もナレーションもなく、あくまで淡々と現象を伝える。

欧州の国際会議場では基本的に発言はメジャー言語を使うのに、自国語での発言を主張する小国の代表と彼をたしなめるように丁寧に説得する議長。大国も小国も一票の権利は同じ欧州機構の理想は、結局議事の進行に支障をきたすだけという現実が大いなる皮肉となっていた。

英国では街頭に設置された数十の監視カメラが一般市民に目を光らせ、壁一面のモニターを民間警備員がチェックしている。犯罪防止が目的なのは理解できるが、悪用される危惧は決して消えない。また、ラブホでセックスに励んだ後の男女の裸体が映し出されるが、2人とも陰毛を剃っている。「50/50」でも主人公の親友がバリカンを使って処理していたが、もはや欧米ではエチケットになっているのか。。。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、この作品に収めれらた職業は特に目新しいものではなく、“世の中にはこんな仕事があったのか!”といった驚きはない。ゆえに病院やビアホール、クラブ従業員の奮闘ぶりを今更見せられても、なんの感慨も抱けなかった。たとえば火葬場の従業員など“人の死”と関わる職業のみを取り上げるなど、テーマの絞り込みがあればもっと強烈な印象を残したかもしれない。そこから何が見えてくるかは分からない、だが多くの死を見つめてきた人が持ち得る生死観はきっとわれわれとは違うはずだ。普段接触できない、立ち入れない聖域に生きるプロの日常をのぞいてみたかった。

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