こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

トータル・リコール

otello2012-08-13

トータル・リコール TOTAL RECALL

オススメ度 ★★*
監督 レン・ワイズマン
出演 コリン・ファレル/ケイト・ベッキンセール/ブライアン・クランストン/ジェシカ・ビール/ビル・ナイ
ナンバー 201
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

バラック小屋が連なる労働者の町はアジア的混沌に包まれ人々は地に這いつくばるように働いている。近代的なビルと交通網が整然と整備された支配層が暮らす町は清潔で機能的。階級間格差はますます広がり、自由と平等を求めるレジスタンス運動が芽生えている。そんな近未来社会、主人公は失ったアイデンティティを模索する旅に出る。本当の自分はいったい何者なのか、夢の残像は本物なのか。“人間の記憶は主観に過ぎない”の言葉に象徴されるように、この映画で描かれた話も作られた記憶なのかもしれない。

ロボット組立工のクエイドは退屈な日常に倦み“人工記憶”を買いに行く。だが、彼の脳のスキャン中に突然警官隊が乱入、クエイドは反射的に全員を倒し逃亡するが、家に帰ると妻のローリーにも殺されかけた上、クエイドとしての人格は偽物と知らされる。

何層にも屋上家を重ねたスラム街を走り跳び、磁気自動車でのカーチェイスを経て三次元的に移動する迷路のようなエレベーターダクト内で追跡劇は、上下動を多用した立体的なアクションで息もつかせぬスリルを味あわせてくれる。また、フォールという大量輸送手段が地球のコア付近を通過するシーンでは無重力がリアルに再現され、それが後の作戦行動の伏線になっているなど細かい仕掛けはアイデアがあふれていた。さらに、クエイドをとことん追いつめるローリーに扮したケイト・ベッキンゼールの鬼気迫る表情は、かえってセクシーに見えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

わずかな手がかりを頼りに己の正体を探すクエイドは、レジスタンスの一員・メリーナに導かれ彼らのアジトでリーダーと会う。そのあたりの展開は大筋で“シュワちゃん版”をなぞるため先が読める上、現実と偽の記憶との境界がますます曖昧になり、結局“どちらにも解釈できる”構成。どうせリメイクするならば意外な新解釈を加えてほしかった。あと、やはり潜在意識に細工するのは「インセプション」の後では古臭く感じてしまった。

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