こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

テイク・ディス・ワルツ

otello2012-08-17

テイク・ディス・ワルツ TAKE THIS WALTZ

オススメ度 ★★
監督 サラ・ポーリー
出演 ミシェル・ウィリアムズ/セス・ローゲン/ルーク・カービー/サラ・シルヴァーマン
ナンバー 204
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

女はずるい。感情のおもむくままに行動し、それが周囲に迷惑をかけ傷つける結果になっても、己の直感に従って生きるのが正しいと思っている。もちろんこの映画のヒロインだが。物語は仕事先で出会った男が近所に住んでいたことから、彼女が夫の目を盗んで逢瀬を重ねる姿を描く。夫とは愛し合っているのにどこか不満、一方で男との関係は相手をその気にさせておいてじらした上、“こうなったのは私のせいじゃない”という言い逃れできるシチュエーションを作っていく。善良そうな丸顔の裏に潜む、いつも頭の中でそろばんをはじいている過剰な自己愛をミシェル・ウィリアムズが陰のある表情で演じる。こんな女に振り回される男たちが哀れだ。

ライターのマーゴは料理研究家の夫・ルーと仲よく暮らしていた。ある日、取材先で知り合ったダニエルの自由さに惹かれ、何度も顔を合わせるうちに、ルーにはない魅力を持つダニエルに心がよろめいていく。

計ったようなタイミングで家を出て、偶然を装って声をかけさせる。ダニエルはそんなマーゴの小細工を見抜いていて、なかなか手を出してこない。そのあたりふたりとも主導権を握ろうとして駆け引きをしているのだろう。しかし、そこには恋の喜びや不倫のスリルはなく、お互いの腹を探り合うだけの消耗戦。その過程はいかにもまどろっこしく、思わせぶりなカットの多用が見る者のイライラを募らせていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

飛行機のチェックインを優先的に済ませるために障害者のフリまでする人間性と、男が歯磨きしている横で用を足したりプールでおしっこしたりする羞恥心のなさ。これらのシーンに象徴される、小賢しい上に“女”としての自覚が薄れているマーゴ。彼女がセックスに溺れていくのならまだしも、灯台でダニエルと再会するロマンチックな約束を夢見ているとはあいた口がふさがらない。女の身勝手さがリアルに描かれていたとは思うが、なんか見たくないものを見せられた気分になった。

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