こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

推理作家ポー 最期の5日間

otello2012-08-23

推理作家ポー 最期の5日間 THE RAVEN

オススメ度 ★★*
監督 ジェームズ・マクティーグ
出演 ジョン・キューザック/ルーク・エヴァンス/アリス・イヴ/ブレンダン・グリーソン
ナンバー 198
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

落ちぶれても矜持だけは無駄に強く、我こそは当代随一の文学者であるという自信は揺るぎない。一方で婚約者の威厳ある父親の前では威勢を削がれたりもする。男はペンから生み出された奇想天外な仕掛けで一世を風靡した作家、死の影におびえる日々の中、連続殺人犯のから挑戦を受ける。そして犯人は作家が考えたトリックを実行する模倣犯。これは、まぎれもなく作家の想像力と犯人の創造力のガチンコ勝負なのだ。映画は稀代の推理小説家、エドガー=アラン・ポーが警察とともに犯人を追跡する過程で、悩み苦しみ恐れ怒る感情豊かなポーの姿を描いていく。そのスタイリッシュな映像は夜の闇をより深く切り裂き、猟奇的な死体ですらアートに昇華する。

母娘惨殺事件、批評家斬殺事件が連続して起き、捜査にあたるフィールズ警視正は手口がポーの小説に書かれていた状況と同じだと気づく。フィールズはポーに協力を要請するが、今度は仮面舞踏会で何かが起きると犯人から予告状が届く。

犯人はさらにポーの婚約者エメリーをさらい、ポーに対してこれらの殺人事件をモデルにした連載小説を書けばエメリーの居場所を教える内容のメッセージを送りつける。犯人は暴力的で残酷ではあるが、同時にポーの著作の熱狂的なファンでもある。それは、顔の見えない「ミザリー」を連想させ、死体に隠されたエメリーの監禁場所のヒントからは、知的だが狂気に駆られた孤独な犯人像が浮かび上がってくる。残された手がかりからフィールズとポーは犯人を絞り込んでいくが、当然ポーの近くにいる人物であることは容易に予測できてしまう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

また、犯人の動機が説得力に欠けるのは知能が高いのに精神に異常をきたしているからなのか。謎に包まれたポーの最期の5日間と「レイノルズ」の“遺言”に着想を得たこの作品はあくまで重厚でミステリアス。だが、ポーの小説をきちんと読みこんでいればもっと楽しめたに違いない。

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