こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

闇金ウシジマくん

otello2012-08-27

闇金ウシジマくん

オススメ度 ★★★
監督 山口雅俊
出演 山田孝之/大島優子/林遣都/崎本大海/やべきょうすけ/新井浩文/岡田義徳/ムロツヨシ/鈴之助/内田春菊/黒沢あすか
ナンバー 211
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

パチンコに溺れて借金し体を売って穴埋めする母を持つニートの娘。上昇志向が強く大きなイベントを企画中だが資金繰りに行きづまる青年。2人はいつかこの暮らしから抜け出したいと願いつつも、社会の底辺からなかなか這いあがれない。映画はそんな彼らの“カネさえあれば”の発想に付け込み暴利を貪る闇金業者の目を通して、カネに人生を狂わされた若者たちの末路を追う。カネがないのは不幸だ、しかしカネに振り回されるのはもっと悲惨。うたかたの夢を見せておいて、それをすべて奪ったうえで負債と絶望を残すカネの魔力が青春の蹉跌となって再現され、はかなくも哀しい余韻を呼ぶ。

イベントプロデューサーの純はあちこちのパーティに顔を出し出資者を探すがなかなか見つからない。追い詰められた挙句、息のかかった知りあいに高利貸しの丑島からカネを借りさせた上、恐喝で刑事告訴して踏み倒そうとする。

一方、母親の借金の利子を肩代わりしている未来はデートカフェで働き、己の「女」としての商品価値に目覚めていく。若いというだけでカネを払うオッサン、楽してカネを稼ぐことを覚えたギャルたち、そしてそのカネをあてにする男たち。逆に中年に達した未来の母は「女」の部分にしがみついて糊口をしのぐが、この母のへそ周りの醜いセルライトが彼女の弱さと堕落した生活を饒舌に物語り、目をそむけたくなるようなリアリティを醸し出していた。“こんな怠惰な人間にはなりたくない”と思う女を黒沢あすかが文字通り肉体で演じている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

純はやたら人脈を自慢するが、実は誰も信用していないし誰からも信用されていない。丑島は彼に、人の心などカネが絡むとすぐに離れ、本当の人脈とは自分が困ったとき利害抜きで動いてくれる人間関係だと思い知らせていく。その過程で暴走族やチンピラ、謎の殺し屋などが登場するが、あまり本筋とは関わりなく、かえって複雑にした印象だったのが残念。このあたりをすっきりさせていれば引き締まったのだが。。。

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