こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

声をかくす人

otello2012-09-07

声をかくす人 THE CONSPIRATOR

監督 ロバート・レッドフォード
出演 ジェームズ・マカヴォイ/ロビン・ライト/ケヴィン・クライン/エヴァン・レイチェル・ウッド/トム・ウィルキンソン/ダニー・ヒューストン
ナンバー 221
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

女はすでに死を覚悟しているのだろう、自分の命と引き換えにしてでも守るべきもののために。有罪を決定づける証拠は薄いが、心を閉ざしたままの彼女の意志は固い。そして世論も法廷もみな彼女の死刑を望んでいる、ひとりの男を除いては。映画は大統領暗殺幇助の容疑で起訴された未亡人の人権を守り、法の定めに則って裁きを受けさせようとした若き弁護士の孤独な戦いを描く。検事も陪審も裁判官も傍聴席もみな大統領支持者の四面楚歌状態で、被告を有罪にすれば弁護能力を問われ、無罪を勝ち取れば世間を敵に回すという苦境に立たされた主人公は、あくまで真実を探ることで、感情に流されない法の適用を訴えていく。

南北戦争末期、リンカーン大統領が南部の残党に射殺され、犯人数名が逮捕される。その中に、彼らの密会に場を提供した寡婦・メアリーもいた。元北軍将校のエイキンは上院議員から彼女の弁護を依頼されるが、メアリーは無実を主張するだけで具体的事実には口をつぐむ。

当然エイキンも暗殺犯を死刑にしたいと考えていたが、被告がだれであっても等しく弁護される権利を持つ合衆国憲法の精神を順守する決意を固める。ところが、検察側証人の証言は矛盾だらけ、しかも民間人なのに軍法会議にかけられる形のみの裁判に違和感を覚え、弁護士としての責務に目覚めていく。その過程でエイキンは自ら証人を集め、権力者たちを説得して回るが、一方で友人や恋人からも白眼視されていく。孤立無援、人々の敵意にさらされても法に対する信頼と信念を貫き通すエイキンの姿は、“米国の正義”とは誰にとっての正義なのかを鋭く問いかけていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

確証がないのに最初から死刑ありきの茶番劇のさらしものにされたメアリー。「戦時に法は沈黙する」、その言葉は“テロ国家”に侵攻し独裁者を絞首台に送った現代の米国人に胸にも突き刺さるはず。あの戦争と裁判は果たして正当な手続きを踏んでいたのかと。。。

オススメ度 ★★★*

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