こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

鍵泥棒のメソッド

otello2012-09-19

鍵泥棒のメソッド

監督 内田けんじ
出演 堺雅人/香川照之/広末涼子/荒川良々/森口瑤子
ナンバー 229
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

男の腹を刺しクルマのトランクに押し込めて現場から逃げ去る、わずか数秒の鮮やか殺し屋の手口。財布の中身は千円札と小銭、自殺を試みるが失敗する売れない役者の絶望。セリフはなくても、ほんの数カット見せるだけで彼らがおかれた状況を端的にわからせてしまう映像の力に引きつけられる。物語は、そんな2人の男がお互いのプロフィルを交換したことから起きる様々なトラブルを描く。決して憧れていた姿ではないけれど別の人生も意外と心地よい、ならばいっそなりきってしまうとどうなるか。しかし世の中それほど甘くはなく、彼らには大きな試練が待ち受ける。

所持金が底を尽きかけた元劇団員の桜井が銭湯に行くと、殺し屋のコンドウが石鹸で足を滑らせ気を失う。桜井はコンドウとロッカーの鍵をすり替え、彼の服と所持品を身に着けて銭湯を抜け出し、記憶障害になったコンドウは自分が桜井だと思い込んでしまう。

桜井は金持ちのコンドウの身分も盗み、彼が“伝説の殺し屋”と知っても尻込みせず、依頼人のヤクザと交渉したりする。一方、コンドウは婚活中の雑誌編集長・香苗と知り合い、結婚を申し込まれたりする。どこかヌケているが殺し屋を演じ切ろうとする桜井の役者魂と、元来の几帳面な性格で桜井以上にまっとうな役者を目指すコンドウのプロ根性、努力家だが気持ちにゆとりのない香苗の独善。コミカルかつディテール豊かな3人の軽妙なエピソードが絶妙のトライアングルを形成し、予想を裏切る展開は二転三転する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、桜井をコンドウと信じているヤクザが絡んだり、コンドウの記憶が戻ったりと、2人の偽りのアイデンティティは破綻していく。その過程であえて緊張を盛り上げるような演出をせず、映画はあくまで間延びした空気を維持し続ける。それが内田けんじ監督の持ち味なのだが、ただこの作品ではあまりにも冗長なシーンが散見しもどかしさが募った。もう少しテンポを速めた編集をしてあと15分短くしていれば違った印象になったのだが。。。

オススメ度 ★★*

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