こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

王様とボク

otello2012-09-26

王様とボク

監督 前田哲
出演 菅田将暉/松坂桃李/相葉裕樹/二階堂ふみ/中河内雅貴/松田美由紀
ナンバー 236
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

“大人になんかなりたくない!”と叫ぶ若者は、己の行動に責任を取る自信がないのだろう。体格は一人前たが気持ちは未熟なまま、何者にでもなれるのに、何者にもなれずに終わってしまう不安が彼を苦しめている。映画は、そんな学生が12年ぶりに昏睡から目覚めた幼なじみと再会し、大人としての自覚を持つに至るまでを描く。守るべきものができ、学校生活や恋人との関係に悩み、友情がやがて使命感に変わっていく過程は、力強さともろさが同居するはかない世界。その中で精いっぱい生きようとする主人公の背中が物悲しい。

18歳になったミキヒコは親友のトモナリ、ガールフレンドのキエらとつるんでいる。ある日、幼稚園の時にブランコから落ちて以降ずっと昏睡状態だったモリオが覚醒したのをニュースをみたミキヒコは、モリオに面会に行く。

ミキヒコは“事故に遭ったのは僕だったかもしれない”といつも自問していたはず。忘れたいのに夢に見るのは、原因が自分にあったのではと我が身を責めているから。だから、精神年齢は6歳のままのモリオを引き受けようとする。しかし、過ぎ去った時間は戻らない、かといって未来が明るく開けているとは思えない閉塞感。両親に見捨てられ施設で暮らすモリオを連れ出すだけでなく、学校を辞めてまでモリオに寄り添おうとするミキヒコもまた親の離婚という形で家族を失っている。そのあたりの、将来への漠然とした恐れや年齢を重ねることへのやり場のない不満を払拭しようともがくミキヒコが切なかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方、モリオは小学生と仲良くなり、彼なりに人生を取り戻そうとしている。それでも、ふとした瞬間に“お母さんに会いたい”と、ミキヒコに胸の内を吐露したりもする。だが、カメラはそれ以上にモリオの心に踏み込まず、結局、彼には共感できなかった。また、やたらテンションが高いキエのはしゃぎぶりも耳触りで、ミキヒコの抱く苦悩とは相容れなかった。

オススメ度 ★★

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