こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館

otello2012-10-10

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 WOMAN IN BLACK

監督 ジェームズ・ワトキンス
出演 ダニエル・ラドクリフ/キアラン・ハインズ/ジャネット・マクティア
ナンバー 246
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

飛び降り、服毒、焼身、入水・・・。黒衣の女の視線に子供たちは巧みに心を操られ、自らを死に追いやっていく。彼女の歪んだ恨みは、幸せな家庭から子供を奪う純粋な悪意となって人々を苦しめる。そしてそれは終わりなく続く。映画は、哀しみの果てに自殺した母親の狂気に似た怨念に翻弄される男を描く。人形の目に映る光の動き、窓ガラスに浮かび上がる凶相、不気味な物音、そういったディテールで幽霊の存在を信じる主人公の感覚が再現され、クールでシャープな映像は首筋を羽根でなでられるような気配すら感じさせる。「見猿・言わ猿・聞か猿」が東照宮よりもっと昔から西洋にもあったとは初めて知った。

弁護士のアーサーは古い邸宅の遺品整理を命じられ、片田舎の村に向かう。無人の屋敷からは大量の書類が見つかり、かつてこの家では子供を取り上げられた上に事故で亡くした女・ジェネットが絶望の果てに首を吊っていたとアーサーは知る。

出産時に妻を亡くした胸の痛みからいまだ立ち直れないアーサー。妻の霊がいつもそばにいると感じている彼にとって死は身近なものだ。一方、アーサーの協力者となるサムは息子がジェネットに殺されたにもかかわらず幽霊を信じず、自分の妻に息子の霊が憑依するのをパラノイアと断じる。この2人に対し、まだ霊的なものにオープンな子供たちはジェネットの意図を受けいれてしまう。子供たちが最期を迎える瞬間のある種恍惚とした表情には安寧が感じられ、死が放つ甘美な香りに誘惑されているよう。恐怖と苦悶に顔を歪ませ息絶えていく和製ホラーとは一味違う出来栄えだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、「ジェネットの姿を見た者は子供が殺される」と聞かされたアーサーは、ひとり息子と合流する前にジェネットの息子の遺体を沼地から浚い、彼女の墓に供葬して魂を慰めようとする。予想を裏切るラストは、ある意味己の願いを叶えてもらったジェネットが、お返しにアーサーの思いを満たしてやったということなのだろう。救いのないようで実は救われている、洗練されたオチだった。。。

オススメ度 ★★*

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