こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

人生の特等席

otello2012-10-20

人生の特等席 TROUBLE WITH THE CURVE

監督 ロバート・ロレンツ
出演 クリント・イーストウッド/エイミー・アダムス/ジャスティン・ティンバーレイク/ジョン・グッドマン/ロバート・パトリック/マシュー・リラード
ナンバー 258
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

目はかすみ足はふらつき小便の出も悪い。もはや日常生活にも支障をきたすほど老いぼれたスカウトマンは、それでもフィールドに通いつめ若い才能を探し求める。ネットで得たデータより経験と直観、「マネーボール」の逆をいく主人公は決して自らの流儀を曲げない筋金入りの頑固者。そして有能な弁護士として活躍する娘も彼の血を濃く引いている。映画は、父を手伝う娘が彼の仕事場から野球の素晴らしさを再認識し、人生の指針を得る姿を描く。その、お互い気にかけているのに素直になれず反目ばかりしている2人が、野球を通じて徐々に過去のわだかまりを解いていく過程が穏やかな感銘と共感を呼ぶ。困ったときは1人で悩まず身近な誰かに頼ってもいい、そんな優しさが映像に満ち溢れていた。

有望な高校生の視察に向かったガスの健康状態を心配した上司は、ガスの娘・ミッキーに現場に同行するように頼み込む。ミッキーは重要な案件を抱えていたがガスと合流、2人は口げんかしながらもドサ周りを続けるうちに相手の本心を探ろうとしていく。

父と息子ならキャッチボールだが、ミッキーはガスの投げた球をバットで打つ。男同士だと対等な関係を築けたはずが、父娘の間柄が彼らの心情を余計に複雑にする。元々ガスは頭のいいミッキーが自分を超えるのを期待していたのだろう、ジャストミートしたミッキーの打球が外野へ飛んでいくシーンは、父娘という男女間の、埋めがたいが触れあうことはできる微妙な距離感を象徴していた。その後すれ違う2人の感情が、他球団のスカウトマン・ジョニーを触媒にして接点を持ち始めるが、彼らに共通するのは野球への深い愛と理解。選手だけではない、米国人の心の故郷のようなのどかな野球場の雰囲気が郷愁を誘う。ただ、ガスがシガーの煙をくゆらせるのには違和感を覚えたが。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてミッキーは、幼いころガスと過ごした球場の粗末な観客席こそ、いちばん美しい思い出であり、己の生きる場所だと気づく。親子だからこその誤解と和解、わが子が同じ道を進むのは親にとっては最高の贈り物に違いない。。。

オススメ度 ★★★*

↓公式サイト↓