伏 鉄砲娘の捕物帳
監督 宮地昌幸
出演 寿美菜子/宮野真守/宮本佳那子/小西克幸
ナンバー 259
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
猟師として抜群の腕前を持つ娘と、物の怪の本性を隠して生きる男。ふたりは決して結ばれてはならない関係でありながら、出会い、惹かれあい、そして運命に身をゆだねていく。並の作家ならば“道ならぬ恋”に落ちた彼らが、苦悩し、二者択一を迫られつつも心の声に従う、もしくは引き離される姿を描くはず。ところが、映画はそうした手垢のついた展開とは明確に一線を画し、予期せぬ方向に舵を切る。しかし、それはただ迷走しているだけで、底の浅いキャラクターと横道にそれっぱなしのストーリーはいつまでたっても停滞したまま。多くの「?」を抱えて置いてきぼりを食った気分になった。
猟師の孫娘・浜路は兄・道節を頼って江戸に出るが、道に迷っているところを犬の面をかぶった男・信乃に助けられ、道節の長屋に案内される。道節は、人と犬の間に生まれた「伏」と呼ばれる魔物を退治して報奨金を狙っているが、さっそく浜路を連れて吉原に伏狩りに行く。
吉原に着く早々道節は客引きに誘われて仕事を放棄、一人になった浜路は運よく信乃と再会、着物を買ってもらったりする。やがて花魁道中が始まると、見物のために行列に近づいた道節が躓いた弾みで浜路を花魁に投げつけ、花魁の正体が伏だとばれてしまう。また信乃が主役を張る芝居小屋にぞろぞろと長屋の連中が観劇に出かけたり、城内で信乃らが興行を打ったりする。これらのエピソードに限らず、あらゆる場面で必然性のないことが突然起こり、物語を強引に引っ張っていく。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
さらに、瓦版発行者の冥土という娘が登場するが、服装が現代のメイド風なのもセンスの悪いギャグとしか思えない。その後も、愛を謳うでも人生に葛藤するでもなく、目を見張るような映像を見せるわけでもない雑なシーンが続き、「南総里見八犬伝」の名を汚していく。作り手の主張やテーマのみならず、内容もまったく理解できない稀有な作品だった。
オススメ度 ★*