こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

黄金を抱いて翔べ

otello2012-10-25

黄金を抱いて翔べ

監督 井筒和幸
出演 妻夫木聡/浅野忠信/桐谷健太/溝端淳平/チャンミン/西田敏行/中村ゆり/青木崇高/田口トモロヲ/鶴見辰吾
ナンバー 217
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

固くない結束、綿密さに欠けるアイデア、脇が甘い仲間、断固たる決意のみえない動機。およそ大がかりな金庫破りを企むグループとは思えないみすぼらしい男たちが織りなす、スタイリッシュのかけらもない映像は、クライムサスペンスのあらゆる定石を覆し見る者の予想を打ち砕いていく。大銀行の堅牢な地下金庫に眠る金塊を盗むプランを実行するのに、ハイテク機器を一切使わず力技で強奪しようとする彼らの姿は、むしろ破滅的な美学すら覚えてしまう。舞台は21世紀の現代なのに登場人物の設定と銀行のセキュリティは原作が発表された20年以上前の水準といった、奇妙な世界観の中で繰り広げられる地を這うような泥臭いドラマは、人間の業の深さ感じさせた。

トラック運転手の北川は学生時代の友人・幸田に金塊強盗を持ちかける。システムエンジニアの野田、元北朝鮮のスパイで爆弾技術者・モモ、エレベーター技師のじいちゃん、北川の弟・春樹をメンバーに加え、用意を整えていく。

これだけの大きなヤマを狙うのならば当然北川の言うとおり「細心の注意」を払うべきなのに、モモは公安や北の殺し屋に追われ、幸田は極左組織に脅され、北川兄弟はチンピラとトラブルを起こす。さらに内通者がいたりと計画はいつ破綻してもおかしくない。しかも彼らは分かちがたい友情や信頼で結ばれているわけでは決してない。準備段階からこんな状態で果たして決行できるのかと、違った意味で非常にハラハラした。それともこれらのアクシデントも北川の想定内だったのか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ようやく北川たち突入部隊は銀行の地下に潜入し金庫室に向かうが、その手際も“鮮やか”と言い難く、不確定要素に満ちたもの。やはりぶっつけ本番で強盗をするときは、臨機応変に危機に対応する柔軟さが必要だということだろうか。誰ひとりとして洗練されたクールなキャラはおらず、命がけの悪事に挑む高揚感も乏しく、達成感も希薄。不思議な感覚に襲われる作品だった。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓