こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

悪の教典

otello2012-11-12

悪の教典

監督 三池崇史
出演 伊藤英明/二階堂ふみ/染谷将太/林遣都/浅香航大/水野絵梨奈/山田孝之/平岳大/吹越満
ナンバー 278
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ありふれた風景が少しずつ歪みだす。昨日までは退屈な時間の繰り返しだったのに、ケータイを使ったカンニングやしつこくクレームをつけてくる父兄、万引きをネタに教え子に肉体関係を迫る教師など、徐々に狂気が教室に充満していく。映画は、正体を巧みに隠して社会生活を営む生まれつきのサイコパスが、本性を露わにしていく過程をバイオレンスたっぷりに描く。殺したい本能が止められない、だからこそ目的を達するためにさわやかな善人でいる必要に迫られる。そんな主人公を伊藤英明が不気味に演じる。

快活で頭の回転も速い高校の人気教師・蓮見は、娘が学校でいじめを受けていると再三クレームをつけてくる男を焼死させる。その後も女生徒から相談を受けたのを機に、素行の悪い生徒や教師を罠に嵌めていく。

蓮見が手を下すのは理想的な学園の邪魔者ばかりなので、行き過ぎた正義にも思える。だが、裏にあるのは常人の理解を超えた心の闇。いや、それは闇というよりも空白、喜怒哀楽がないゆえに卓越した知性で感情豊かなフリをしていなければならない日常こそが彼の苦悩であり、苦悩を解放しても構わない“理由”ができると行動に移す。人を殺すときも彼の表情からは何もくみ取れず、ただ、己に与えれられた仕事と黙々とこなしていく。ターゲットになった学校関係者の恐怖を弄ぶわけでもない、殺しの感触を楽しむわけでもない、そこには悪意では足りない超越した意志すら感じさせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてわずかなミスから犯行が露見し、蓮見は生徒全員を殺すことでもみ消しを図る。深夜の校舎内で奏でられる血と殺戮のシンフォニー、容赦なくショットガンの引き金を引く蓮見の姿は、もはや人間の不信心に鉄槌を下す神のよう。生徒たちの死はもちろん彼に何の反応を及ぼさないが、もっと深い部分で彼の魂を浄化しているのだ。ラストで“to be continued”となっていたが、次回作ではレクター博士を凌駕するほどの凄みを身に付けておいてほしい。。。

オススメ度 ★★★

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