こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アルマジロ 

otello2012-11-28

アルマジロ ARMADILLO

監督 ヤヌス・メッツ
出演
ナンバー 289
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

突然の銃声、被弾して呆然とする兵士、遮蔽物のない平地から応戦する小隊、手榴弾でズタズタにされた無残な死体。いつ銃弾を食らうかもしれない戦闘シーンは短いカットをつなぎ合わせてテンポ良く展開し、これがドキュメンタリーであるのを忘れさせてしまう緊迫感を持つ。カメラは国際平和活動でアフガニスタンの紛争地に派遣されたデンマーク軍兵士の7か月を追う。ほとんどの時間はパトロールと周辺住民との交渉、実戦を経験したくてウズウズしている彼らの姿が印象的だ。

メス、ダニエル、ラスムス、キムの4人はタリバン支配地に近い最前線の基地に配属される。最初のうちは地元住民はみなタリバンに見えるくらい緊張していたが、徐々に単調な毎日に飽きてくる。

彼らは自分の死を想像できないのだろう。設備が整ったキャンプに寝泊まりし近代的装備に身を固め統制のとれた行動をとり、実際にはタリバン兵よりも地雷が恐ろしい。仮にタリバン兵と交戦しても、せいぜい旧式の自動小銃しか持たない彼らには絶対に負けないと思っている。デンマーク兵にとって、戦争というよりもむしろ危険をものともしない勇気を身に付けるための冒険。だからこそ地域住民の苦情に付き合い絡まれるばかりの哨戒任務より戦闘が待ち遠しいと口にできるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてタリバンの攻勢が始まり、デンマーク軍も出撃する。ところが、終わってみれば敵はたった数人、全員血まみれのボロ雑巾になっている。そして無人偵察機がとらえた空爆の映像。だが、勝利からは期待したほどの高揚感は得られない。それはやはり、アフガンの戦争は大義も正義も曖昧なままだから。ディレクターもカメラマンも映画は“戦争”のほんの一部を投影しているだけなのはわかっていて、カメラがとらえた事実のみを伝えようとする。決して反対も擁護もしない。ただ、21世紀の戦争においては、「英雄」が生まれないことは確かだと、この作品は強く訴える。

オススメ度 ★★★

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