こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

007は二度死ぬ 

otello2012-11-29

007は二度死ぬ You Only Live Twice

監督 ルイス・ギルバート
出演 ショーン・コネリー/丹波哲郎/若林映子/浜美枝/ドナルド・プレゼンス/テル・シマダ/カリン・ドール/バーナード・リー
ナンバー 274
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

米ソ冷戦の真っただ中だった1960年代、諜報員による殺人や破壊活動は別世界のファンタジーだったのだろう。夢のような新兵器や命がけの銃撃戦といった非日常、イギリス人の日本に対する偏見と誤解の前にリアリティは吹き飛び、21世紀の尺度から鑑みるにコメディとしか解釈できないシーンが連続する。CGなどもちろんなく一目でミニチュア模型とわかるセットや、スピード感に欠けるカーアクションや格闘スタントは噴飯ものだが、おそらくこれでも当時は“最先端”だったにちがいない。ストーリーは矛盾だらけだし、ボンドもスパイとしてより女たらしで活躍する機会が多いが、映像の手作りテイストがなんとも懐かしい。

米ソの宇宙船が相次いで衛星軌道上で謎の大型宇宙船に拿捕され、消息を絶つ。事件のカギが日本にあると目星を付けたMはボンドを東京に送りこむ。ボンドは日本の情報機関の田中の協力の下、怪しげな実業家・大里を調査する。

東京オリンピックを無事成功させ、大阪万博を間近に控えていた時代、日本はやっと先進国に追いついた、と日本人は考えていたはず。ところがこの映画で描かれている、人力車が走り奇妙な結婚式を挙げる日本の風習と忍者や湯女等の日本人像を見ていると、それは思いあがりにすぎず、まだまだ西洋人からは発展途上国扱いされていたことがうかがえる。また、ボンドの胸毛を「男らしい」と日本の女たちがありがたがる場面があるが、男も脱毛する現代とは正反対の意識に失笑を漏らしてしまった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だいたい、ほとんどの調査は田中任せの上、ピンチになるとアキという田中の部下の女に助けられたりと、はっきりいってボンドなしでも陰謀は阻止できたのではないか。などと、5分に1回くらいの割合でツッコミを入れるのが、いまやショーン・コネリーの007映画の楽しみ方。ふた昔前の映画ファンはこの程度で大喜びをしていたのかと思うと、隔世の感がある。

オススメ度 ★★*