こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フランケンウィニー

otello2012-12-08

フランケンウィニー FRANKENWEENIE

監督 ティム・バートン
出演 チャーリー・ターハン/ウィノナ・ライダー/マーティン・ショート
ナンバー 287
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

大きな目に細いあご、細長い手足。カマキリのような登場人物の外見は後ろめたい暗さをまとい、平穏な日常がある日突然崩れるかもしれない脆さを予感させる。両親にも“少し変った子”と思われている孤独な主人公の世界観は、わずかな表情の変化や体の動きといったディテールにまでいき届いた動きに見事に投影されている。物語は事故死したペットを蘇らせた彼が、秘密を守り切れずに巻き起こしてしまった大騒動を描く。冒頭の劇中映画が「3D」なのが笑わせてくれる。

唯一の友・愛犬のスパーキーを交通事故で亡くしたヴィクターは、科学の先生に「電気を流せば死体でも反応する」と教わり、スパーキーの墓を掘り返して雷を直撃させる。ヴィクターは生き返ったスパーキーを隠すが、スパーキーは勝手に外に出てしまう。

カエルの実験や深夜の動物墓地、屋根裏部屋など、ヴィクターを取り巻く環境はサイレント時代のホラー映画の趣を色濃く残し、懐かしくも斬新な造形は、“他人とうまく付き合えない”ヴィクターの寂しさや生きづらさを象徴する。また、友人たちもどこか陰のある少年少女ばかりで、両親や先生もヴィクターの心をわかろうとしない。そんなヴィクターが感じる、個性を否定された居場所のなさとスパーキーへの愛が、やわらかな陰影のモノクロ映像からにじみ出す。ただひとり科学の先生だけはヴィクターの好奇心に理解を示すが、いかにもマッドサイエンティスト風の風貌が、この先生もまた周囲になじめないつらさを抱えてきた過去をうかがわせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

折しも学校では『科学展』の作品を募集中で、スパーキーの復活を知ったクラスメートたちが蘇生のやり方を教わろうとヴィクターを脅す。彼らの小動物は恐ろしい姿に変身するが、それらが20世紀の怪物映画の模倣ではなく、オリジナリティのあるものだったらよかったのだが。そしてやはり、一度死んだ命は決して生き返らせてはいけないということを、両親はヴィクターに教えるべきだろう。。。

オススメ度 ★★*

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