こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホビット 思いがけない冒険

otello2012-12-18

ホビット 思いがけない冒険
THE HOBBIT:AN UNEXPECTED JOURNEY

監督 ピーター・ジャクソン
出演 アンディ・サーキス/イアン・ホルム/イアン・マッケラン/イライジャ・ウッド/クリストファー・リー/ケイト・ブランシェット/マーティン・フリーマン/リチャード・アーミティッジ/マヌー・ベネット
ナンバー 310
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あまねくディテールにまで行き届いたリアリティと、ファンタジーを体感させてくれるめくるめくようなカメラワークは、新しいシリーズでもさらに洗練され、すべての映像からピーター・ジャクソン監督の完璧主義がうかがえる。CGを使えばどんなものでも再現できるしキャラクターの喜怒哀楽ですら表現できるようになった。しかし、映画はその先にある“感情のある生き物の心に潜む真実”を暴きだすためにより深い考察を加えていく。物語は平穏な暮らしを望む青年が他人に手を貸す決心をする姿を通じて、彼の成長を描く。数多の登場人物が現れるため相関関係が複雑で、味方に全幅の信頼をおけない危うさの上で行われる冒険は危険に満ちている。

ホビット族のビルボは魔法使いガンダルフの訪問を受ける。ビルボはドラゴンに奪われたドワーフの王国を取り戻す旅に誘われ、参加する羽目に。ビルボは13人のドワーフガンダルフに合流したが、村の外は悪意に満ちた怪物が跳梁跋扈する恐ろしい世界だった。

途中ビルボはゴラムと遭遇する。大きく見開いた青い瞳はあらゆる秘密を見透かすような純粋さを湛えているが、その目は見えていてもそこから得た情報を的確に処理できず邪悪な方向に解釈しているかのよう。指輪の魔力で餓鬼に落ちたゴラムの哀しみと苦痛、生きていることに対する苦悩、運命への怒りと恨みがビルボの前に立ちはだかる。だが、ビルボはゴラムから指輪を盗んで彼の力を奪い、逆に後の悲劇の種も抱え込んでしまう。ゴラムの圧倒的な存在感が作品の中で異彩を放っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

道中、オークをはじめトロールやゴブリン・岩石巨人などの襲撃を一行は受け、そのたびに知恵と勇気と行動力だけではどうしようもないところに追い詰められる。ところが、まさに絶体絶命の危機という瞬間になっていつもタイミングよく助っ人が現れて彼らを救うのだ。それが何度も繰り返されるために展開が直線的になってしまう。この内容ならば2時間に収められたと思うのだが。。。

オススメ度 ★★*

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