こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マリー・アントワネットに別れをつげて

otello2012-12-24

マリー・アントワネットに別れをつげて Les adieux a la reine

監督 ブノワ・ジャコ
出演 レア・セドゥー/ダイアン・クルーガー/ヴィルジニー・ルドワイヤン
ナンバー 314
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

外界では秩序が崩壊しているのに、いつもと変わらぬ日常が繰り返される。やがて革命の噂が届き始め、憶測が飛び交い、そこに暮らす人々は浮足立ち始める。保障された身分を奪われるなんて信じたくはない、だが耳に入るのは悲観的な報せばかり。そして、もはや疑いもない現実となった時、彼らはどうふるまったか。映画は、フランス革命直後の3日間の宮殿内の様子を、侍女の目を通して描く。移り気な王妃、変わり身の早い取り巻き、忠誠を誓う側近、うろたえて何もできない者etc.宮廷に寝起きする様々な人間模様が実況中継のようにリアルに再現される。

マリー・アントワネットの朗読係・シドニーは、7月14日も朝から寝室で奉公する。翌日、バスチーユ監獄が民衆に襲撃され陥落したというニュースとともに処刑リストが公開され、名を記された者たちは恐怖と不安におののいている。

壮麗豪華なヴェルサイユ宮殿、王侯貴族たちが身に付ける華麗な衣装、使用人たちの質素な居住スペースと食事。さらにシドニーと王妃が読むカラーのファッション誌といったディテールが当時の空気を濃密に漂わせる。シドニーは心酔する王妃の歓心を買うためにまず側近に気に入られなければならない。彼女たちのために立ち回り、情報を集めるが、シドニーの立場ではただ命令に従うだけで積極的には行動を起こせない。一方で王妃からポリニャック夫人への恋心を聞かされ、気持ちを踏みにじられたりもする。そのあたり、カメラと音楽は饒舌にシドニーの心情を代弁し、レア・セドゥーの抑制した感情表現を補っていく。演技と映像・音楽の補完関係が見事に機能していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、権力が王から剥奪されると、体制側の貴族は我先にヴェルサイユから逃亡、シドニーは王妃にポリニャックの身代りになれと懇願される。シドニーにとってドレスを着るのも馬車に乗るのも初めてだったのだろう、はしゃいで沿道の農民に手を振る姿は、年頃の娘らしい初々しさ。彼女の笑顔は運命の皮肉を象徴していた。

オススメ度 ★★*

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