こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ

otello2013-01-04

シェフ! 三ツ星レストランの舞台裏へようこそ COMME UN CHEF

監督 ダニエル・コーエン
出演 ジャン・レノ/ミカエル・ユン/ラファエル・アゴゲ/ジュリアン・ボワッスリエ/サロメ・ステヴナン
ナンバー 1
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

もはや時代遅れと称される三ツ星レストランのシェフと、彼を信奉しそのレシピをすべて暗記している男。2人は互いに共鳴し合い刺激を与え合って、新しいメニューの開発に挑む。そこで語られるのは見た目も美しく舌を満足させる料理に対する愛情ではなく、人と人が出会うことで派生する化学反応。物語は、高級レストランに職を得た無名の料理人が自らのアイデアで創作料理を作っていく過程で、伝統に胡坐をかいていては評価されず、未知のチャレンジが受け入れられるには時間がかかるという現実を描く。それはまるで主役以上に目立っていた分子料理のように、グルメ映画の“調理法”への全くユニークなアプローチだった。

自分を天才コックと信じるジャッキーはレストランを次々にクビになるが、偶然知り合った有名シェフ・アレクサンドルの店で働き始める。ジャッキーは料理人を仕切る立場になり、星の数を落とすと解雇されるアレクサンドルのために一肌脱ぐ決意をする。

ジャッキーとアレクサンドルは奇妙な日本人の格好をしてライバル店をスパイしに行くが、供される分子料理の数々が非常に斬新だ。宝石のような青い粒、自由に形作られた盛り付けからは想像できない食感、一口で様々に変化する風味など、自然界の食材にはない珍奇だが美味な味わい。試験管生まれでも立派な商品として通用する食文化の奥の深さに目からうろこが落ちる思いだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

己が正しいと思ったやり方はたとえ絶対君主であるアレクサンドルが相手でも貫き通すジャッキーは分子料理も積極的に取り入れ、アレクサンドルのレシピに現代的なアレンジを加えていく。一方で妊娠中の婚約者には頭が上がらずひたすら低姿勢を崩さない。その、仕事と私生活のアンバランスがジャッキーの世間知の低さと不器用な生き方しかできない彼の性格を象徴していた。でもやはり、どんな味がするかわからない分子料理より、ハーブで調えたステーキのほうがおいしそうだったな。。。

オススメ度 ★★*

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