こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ストロベリーナイト

otello2013-01-08

ストロベリーナイト

監督 佐藤祐市
出演 竹内結子/大沢たかお/三浦友和/西島秀俊/小出恵介/丸山隆平/武田鉄矢/染谷将太
ナンバー 282
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

心の烙印となって焼きつけられた忌わしい体験、その記憶を少しでも和らげようとヒロインは恋に落ちる。心の闇を共有できる存在に身を委ねる、しかしそれはパンドラの箱を開ける行為。組織の理論に反発し真実を追おうとしても、彼女自身も不適切な関係に縛られていく。映画は男の世界で奮闘する女刑事の愛と正義を通じて、「死」に憑りつかれた人間の憎悪と憤怒、恐怖と不安を描く。克服するには目を合わせる相手よりも同じ方向に進んでくれる相手が必要、だが求めても得られるのは孤独だけと分かっている。降りしきる雨は決して過去を洗い流してはくれない、そんな彼女の絶望が切ない。

チンピラ連続惨殺事件が起きる。担当となった姫川玲子は“犯人は柳井健人”というタレコミを受けるが、情報は上層部から握りつぶされる。不審に感じた玲子は単独で柳井を洗ううち、9年前の不可解な事件に突きあたる。

柳井の張り込み中に、ソフトな物腰の奥にただならぬ雰囲気を宿した男・マキタと出会う。血と殺意を隠し持つ者同士、マキタはたちまち玲子の内面を見抜き、玲子もマキタに気を許してしまう。やがて彼が事件の重要参考人と知ってもなお、理性では抑えきれない激情が玲子を走らせる。そのあたり、物語は謎解きや猟奇性、犯罪者との駆け引きといった従来の刑事ドラマとは一線を画し、玲子の苦悩と葛藤に焦点を当てる。狂気と正気のはざまで揺れ動く登場人物たちの心理が通奏低音のように響く、終始雨に濡れそぼった映像が斬新だ。一方でアクションもサスペンスも封印し、ひたすら警察社会の人間模様を追求する展開はやや刺激に欠ける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

マキタの魅力に抗えなくなった玲子はミニバンの中で彼に抱かれる。そしてその場を見つめる玲子の部下・菊田。まともに他人を愛せなくなった男と女が、ちぐはぐな心と体を持て余しながらも互いの空白を埋めようと求めあう姿が、どこまでも哀しみを湛えていた。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓