こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

さよならドビュッシー

otello2013-01-10

さよならドビュッシー

監督 利重剛
出演 橋本愛/清塚信也
ナンバー 309
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ふたりの女の子が無邪気に戯れる柔らかな日差しに包まれた日々は悲劇の後も絶えることなく、彼女たちは美しい高校生に成長する。だが、深く結ばれた友情も不幸な事故で奪われてしまう。そして生き残った少女は自分だけでなく死んだ少女の夢も託される。カメラはそんな幼いころから「死」を身近に体験してきたヒロインが絶望の中から立ち直る姿を追う。周辺人物の説明的なセリフと過剰な感情表現、それらはこの作品の観客と想定しているティーンエージャーを意識しているのだろう、誰にでも理解できるわかりやすく噛み砕いた演出はライトノベルのドラマ化を見ているようだ。

両親を殺されたルシアは同い年のいとこ・遥の家に引き取られる。10年後、遥はルシアと祖父が住む離れにいたところで火事に遭い、ルシアと祖父は死ぬ。遙も大やけどを負うが全身整形手術で元の体を取り戻し、ピアニスト・岬に弟子入りしてプロを目指す。

指のリハビリに「熊蜂の飛行」を弾かせるなどユニークな指導で、遙の肉体だけでなく心の凝りもほぐしていく岬。彼の頬杖を突くしぐさや遙を諭す話し方はまるでセラピストのよう。さらに遙の命を狙う出来事が続けざまに起きると、司法試験を1番で合格した頭脳をフル稼働させて容疑者を絞り込んでいく。映画は遙が再生していく過程と姿なき恐怖を並行して描き、遙の繊細な指先が奏でる旋律と祖父の遺産を巡るミステリーをシンクロさせていく。ただ、そのあたりの語り口はあくまで軽く、人間のドロドロとした屈折した思いとは無縁。どこか予定調和のゲームに参加しているような気分になる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

コンクール出場が決まった遥はいっそう研鑽を積み、奇跡のピアニストとして注目を浴びる一方で、自身の抱える秘密の重さにも耐えきれなくなっていく。呵責や不安・葛藤や苦悩といった感情が彼女の表現力に幅を持たせ、「月の光」の甘美なメロディとして見事に昇華されていた。。。

オススメ度 ★★*

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