こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

DOCUMENTARY of AKB48 No flower without rain 少女たちは涙の後に何

otello2013-01-25

DOCUMENTARY of AKB48 No flower without rain
少女たちは涙の後に何を見る?

監督 高橋栄樹
出演 多田愛佳/指原莉乃/篠田麻里子/高城亜樹/高橋みなみ/前田敦子/板野友美/梅田彩佳/大島優子/松井珠理奈/峯岸みなみ
ナンバー 19
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

集団での写真撮影では精いっぱいの笑顔を振りまいている。だが、カメラマンが去ると、膝から力が抜けてその場にへたり込み、床に突っ伏して泣き崩れる少女。“総選挙”で17〜32位に甘んじたアンダーガールズの悲哀は、まさしく実力主義の競争社会の縮図。敗者には何も残らない、与えられるのは這い上がるチャンスだけ。また、恋愛禁止令を破った者は即解雇の厳しい掟に目頭を押さえながらも、ファンの前で己のしたことにけじめをつける。そして彼女を見つめるスタッフのオッサンも号泣している。感極まるのではない、悔しくて悔しくてたまらない、そんな思いがこもった涙の数々は人間の真実を見ているようだった。

コンサート会場で“AKB卒業”を宣言した前田敦子。センターポジションを誰が埋めるのか注目が集まった総選挙は、予想通り大島優子が1位に選ばれる。一方、過去の恋愛が報道された4位の指原莉乃HKT48入りを命じられ、単身博多へ向かう。

映画は、特定のメンバーにスポットを当てるのではなく、2012年にAKB48に起きた事件をだいたい時系列に拾う。コンサート、握手会、レッスン風景などの日常が散文的に描かれるとともに、時に主要メンバーのインタビューが挿入される。彼女たちに共通しているのは強烈な上昇志向、“前田卒業”で空いた1枠や恋愛報道での上位メンバーの解雇にも、顔には出さないが取って代わろうと闘志をかきたてている。移籍した指原が自分のせいでHKTからメンバーがひとりはずされるのを理解していて、自らを“嫌われ者”と自嘲するシーンに、彼女たちの人間関係が凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

“組閣”と称したコンサート中に突然人事異動が発表される。中にはジャカルタや上海行き辞令を受ける少女たちもいる。はじめは失望に顔色を変えるが、すぐに飛躍のステップにすると気持ちを切り替えるあたり、非常に頼もしい。日本の若者は海外に出て冒険しなくなったと言われるが、彼女たちのエネルギーを見ていると、まだまだ捨てたものじゃないと思わされた。なにより一瞬一瞬を真剣に生きている姿に、つい我が身を省みさせられた。。。

オススメ度 ★★★*

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