世界にひとつのプレイブック
SILVER LININGS PLAYBOOK
監督 デヴィッド・O・ラッセル
出演 ブラッドリー・クーパー/ジェニファー・ローレンス/ロバート・デ・ニーロ/ジャッキー・ウィーヴァー/クリス・タッカー
ナンバー 16
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
薬を服用していないと感情が抑えきれない男は、今の自分を否定して無理に変わろうとしている。喪失感に苦しみ自暴自棄になったこともある女は、自分を受け入れて新たなステップを踏み出すきっかけを探っている。不完全なふたり、彼らはお互いの欠けたピースを埋めるかのように出会い魅かれていく。だが、物語は手垢のついた展開とは一線を画し、主人公を元妻に未練を残したダメ男にして、恋を始めるタイミングの難しさとままならない人生の悲喜こもごも至るを描く。心が壊れた人を立ち直らせるのがいかに困難で根気がいるか、映画はコメディを装いつつ、豊かな人間関係こそが傷ついた魂を救えると訴える。
妻の浮気相手への暴行ですべてを失ったパットは、精神病棟を退院したばかりだが、いまだ妻と復縁できると信じている。ある日、夫を亡くしたティファニーを紹介されるが、彼女のユニークな価値観にパットは翻弄される。
ティファニーはパットを気にいったのか、いきなり部屋に誘ったりジョギングに付き合ったりとやたらに絡んでくる。さらに「妻との手紙」をエサにダンス大会のパートナーに指名、自宅を改装したダンスフロアでレッスンを開始する。その過程で、時に挑発的に、時に突き放した態度でティファニーはパットにアプローチを続けるが、パットはまったく意に介さない。不器用にしか生きられないふたりのカン違いと思いこみと鈍感さがかみ合わず、ぎこちない恋の駆け引きが思わず笑いを誘う。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ただ、カメラはパットやティファニーの内面にまで踏み込もうとはせず、あくまでふたりを観察する立場を崩さない。元々、程度の差こそあれふたりは精神を病んでいる。ゆえに彼らが常識はずれな行動に出るのはある程度納得できるのだが、心理的な葛藤までは見る者には理解できない。もちろん妻の浮気現場に出くわしたショックは想像に余りあるが、パットの暴力的衝動には共感も同情も沸いてこなかった。まあ、彼を見守る家族や友人のありがたさはとても実感できたが。。。
オススメ度 ★★*