こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

王になった男

otello2013-02-20

王になった男

監督 チュ・チャンミン
出演 イ・ビョンホン/リュ・スンリョン/ハン・ヒョジュ/キム・イングォン/シム・ウンギョン/チャン・グァン
ナンバー 42
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

周囲の者すべてが自分にひれ伏す最高権力者になる。それは多少の自由を犠牲にしても余りある全能感。最初は恐れ、次に戸惑うが、経験を積むにつれてやがて地位にふさわしい自信と威厳を身につけたとき、王が持つ絶大な力を実感する。物語は暴君の危篤を隠すために影武者に仕立て上げられた男の、権謀術数渦巻く宮廷の腐敗と非効率、そして一般民衆を人とは思わない貴族高官たちとの闘いを描く。権力闘争に明け暮れ疑心暗鬼に陥っていた王に対し、入れ替わった影武者が善政を始める。その過程で、貧しい人々でも幸せに生きられる世の中を目指す影武者の理想に、朝廷の中枢人物までが感化され良心に目覚めていく姿が心地よい。

日々暗殺に脅え孤独にさいなまれていた朝鮮王・光海君は影武者探しを側近の都承旨・ホに命じ、ホは妓生宿で風刺芸を演じていた王と瓜ふたつの男を宮廷に連れ帰る。折しも王は突然病に倒れ重体、影武者が玉座に座り政務を執り行うことになる。

もちろん王宮の暮らしなどまったく縁がなかった影武者、トイレにも行かせてもらえず苦悶する場面に王の不自由さが凝縮されている。誰もが命令を聞き、殺生与奪の権を持つ。だが、排便という普通なら他人に見られたくない行為を大勢の女官の前で済ませる。そうした矛盾が、王政システムの頂点に立ち、個人であっても国家のシンボルの役目も果たさなければならない者のあり方を見事に象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

市井の民としての己の体験と召使として不遇の人生を送ってきた娘の身の上話から政治を猛勉強した影武者は、更なる苛政を敷こう目論む朝廷高官の反対を押し切って法を整備し正義を執行しようとする。一握りの勝ち組のみ栄え庶民はますます搾取される、グローバル化によって空前の競争社会となった21世紀の韓国。大多数の人々は、経済成長よりも平穏な幸せをもたらしてくれる公正で私心のない指導者を待ち望んでいるのだろう。この影武者のような。。。

オススメ度 ★★*

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