こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャンゴ 繋がれざる者

otello2013-03-03

ジャンゴ 繋がれざる者 DJANGO UNCHAINED

監督 クエンティン・タランティーノ
出演 レオナルド・ディカプリオ/ジェイミー・フォックス/クリストフ・ヴァルツ/ケリー・ワシントン/サミュエル・L・ジャクソン
ナンバー 52
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

キャラクターのアクの強さ、時に言葉遊びを楽しむ意外性あふれる緩急自在の展開、たっぷりと時間を取ったテーマソング、そして映像の力を前面に押し出した演出etc. 1960年代の大作を思わせる装飾に満ちた悠然とした語り口は風格さえ漂わせ、映画という“ホラ話”を物語る圧倒的なエネルギーとなって観客をねじ伏せる。また、差別と偏見・銃と暴力に対する批判を加える一方で、愛と自由を求める人間の尊厳を高らかに謳いあげた波乱万丈の冒険の旅は、タランティーノの集大成ともいえる完成度。何より“正義”の定義は人によってさまざまだが、“良心”や“愛”の価値観は時代や場所を問わず共通していることを教えてくれる。

黒人奴隷のジャンゴは賞金稼ぎのシュルツに買われて解放された後、銃の扱いを習ってよきパートナーとなる。その後、生き別れた妻・ヒルディの消息を知ったジャンゴは、シュルツとともに南部の農園主・キャンディの元に乗り込んでいく。

フリーマンと名乗りまさしく自由人として振る舞うジャンゴに、白人は違和感と警戒感を抱くだけでなく怒りすら覚えるが、黒人は奇異と不可解なまなざしを向ける。特にキャンディの黒人従僕・スティーブンンスは、キャンディが黒人に残虐の限りを尽くすよりも同じ黒人が白人と対等の立場にいるのが気に食わず、蛇のようなしつこさと憎しみのこもった目でジャンゴたちをにらむ。そんな明晰だが屈折した男をサミュエル・L・ジャンクソンが卑屈な視線で好演。農園しか知らず主人への忠誠がすべてといった奴隷の人生観が凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてヒルディを見つけたシュルツとジャンゴは彼女を買い戻す計画を進めていくが、スティーブンスの鋭い観察眼の網にかかってしまう。その過程でシュルツとジャンゴ、キャンディとスティーブンスによる虚々実々の腹の探り合いを経て、急転直下血しぶき舞う銃撃戦、破壊と復讐の壮大なオペラになだれ込む。久しぶりに、映画館こそが「娯楽の殿堂」の地位を復活させた作品だった。

オススメ度 ★★★★

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