こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャッキー・コーガン

otello2013-03-06

ジャッキー・コーガン KILLING THEM SOFTLY

監督 アンドリュー・ドミニク
出演 ブラッド・ピット/リチャード・ジェンキンス/ジェームズ・ガンドルフィーニ/レイ・リオッタ/サム・シェパード/スクート・マクネイリー
ナンバー 7
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

生きていくには犯罪に手を染めるしかない。荒涼とした風景の中、技能もなく教育も受けていないだろう彼らのおかれた閉塞感は息苦しくなるほどだ。映画は、絶対犯人と疑われない強盗計画を実行した2人組が、口の軽さから破綻して徐々に追い詰められていく姿を描く。逃げられないと分かっている、殺されるのも時間の問題、それでも何とか先延ばしにすれば助かるのではと殺し屋に協力する若者の、脅えた犬のような目が感情をリアルに表現する。

賭場に押し入ったフランキーとラッセルはまんまと大金をせしめたうえ、賭場の支配人・マーキーの仕業と周囲に思わせる。だがギャング組織は真相を探るため凄腕の殺し屋・コーガンを呼び寄せ、フランキーたちに迫っていく。

ラッセルはどうしようもないアホ、酒ばかり飲んでいる太った殺し屋や、ラッセルの新しいパートナーなどその他の登場人物もスキだらけ。そんなどこか抜けた男たちの中で、コーガンは漏れ出た情報からフランキーの居所をたやすく突き止め身柄を確保する。コーガンの「アメリカは国家ではなくビジネスだ」という言葉は、たとえカネと欲望にまみれた犯罪者の世界であってもWin-Win関係を構築できなければ生き残れないことを象徴していた。一方で殺人の代金は値切られる、娼婦へのチップは払わないなど、カネにまつわるエピソードで、物語の根底にある深刻な不景気を伝える仕掛けが冴えている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

フランキーを演じたスクート・マクネイリーの風貌や仕草はスティーブ・ブシェミを思わせる。タランティーノコーエン兄弟の作品でブシェミが演じる、小心なのに虚勢を張るがすぐに弱さをさらけ出す男に似た役柄だ。この映画の作風自体も、愚かで間抜けな人間模様を凄惨な暴力と間延びした会話といった相反するテイストの相乗効果を狙っている。ただ、そこでもう少し飛びぬけたキャラクターを創造できていれば強烈な印象を残せたのだが。。。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓