こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

すーちゃん まいちゃん さわ子さん

otello2013-03-07

すーちゃん まいちゃん さわ子さん

監督 御法川修
出演 柴咲コウ/真木よう子/寺島しのぶ/木野花 /佐藤めぐみ/井浦新/染谷将太
ナンバー 56
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

変わり映えのしない毎日、嫌なこともあるがなんとか自分を励まして、“平凡”な生活を維持しようとしている。叶えたい夢があるわけでもなく、ただ今の暮らしがずっと続くのかと不安に感じたりもする。映画はそんな30代女性3人の日々をスケッチする。もう若くはないが何かをつかんだ達成感はない、カネには困っていないが未来への希望もない、恋を忘れてはいないが優先順位は低く、そしてなにより女同士でいるのがいちばん心地よい。男女が平等に働く時代、一方で結婚という価値観からも逃れられない彼女たちの心情がリアルに再現される。

カフェ店員のすーちゃんは店のリーダー的存在。営業ウーマンのまいちゃんは仕事はできるがセクハラ耐えている。母が祖母を介護する自宅で在宅勤務するさわこさんは女だけの家に違和感を抱いている。3人は親友同士、時々集まってはグチをこぼし合っている。

みな一生懸命まじめに生きているのに、どこか満たされない。不愉快な出来事の一つ一つはそれほど気にならないのに、いつしか大きな不満になっている。わがままな同僚、身勝手な不倫相手、介護から逃げる家族など、彼女たちの苛立ちの原因は様々だが、人間関係の小さな齟齬が積もり積もって限界まで達する過程がディテール豊かに描かれ、大いに共感を呼んだ。自転車に二人乗りしながら思いっきり泣き叫ぶすーちゃんとまいちゃんの姿は切なくほろ苦いけれど、もう少しがんばれと声をかけたくなる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、すーちゃんは店長に昇進、まいちゃんは寿退社、さわこさんは介護に積極的になっている。それぞれが1年前と違っている、でも、“満たされない感”はやっぱりそのまま。キャリアをあきらめて母になったまいちゃんが「捨てたほうの人生の続きもありだったかな」と口にするが、それを選ばなかったのも彼女自身。結局、今を精一杯生きることでしか幸せにはなれないとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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