こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ライジング・ドラゴン

otello2013-03-11

ライジング・ドラゴン 十二生肖

監督 ジャッキー・チェン
出演 ジャッキー・チェン/クォン・サンウ/ジャン・ランシン/ヤオ・シントン/リアオ・ファン/ローラ・ワイスベッカー/オリヴァー・プラット
ナンバー 54
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ローラーブレード付きのボディスーツでスケルトン競技のように激走し、屋根や壁を伝って逃走し、おなじみのカンフーファイトで大暴れした後は、はるか上空からのダイブ。衰えを知らぬ肉体を駆使した大活劇の数々は、ただ見ているだけでアドレナリンが噴出する。常に斬新なアイデアでハラハラさせつつもユーモアを絡ませ、もはや様式美すら感じさせる格闘シーンも健在。ジャッキー・チェンのラストアクションになるそうだが、これで見納めかと思うとジャッキーの何気ないしぐさや表情に過去の名作を思い出してしまう。そして、理屈や細かい矛盾などどうでもいい、スクリーンに身を浸している間は憂さを忘れさせてくれるジャッキーのサービス精神には脱帽するしかない。

19世紀に円明園から略奪された十二支首像の回収をアンティークディーラーのMP社に依頼されたJCは、仲間とともにパリから南洋の島などを駆け巡って、一つずつ首像を手に入れていく。だが、最後に残った龍の首には恐ろしい陰謀が隠されていた。

JCがフランス貴族の末裔や中国人学生グループなどを一行に加え冒険の旅を続ける一方で、オークションでの値上がりを期待するMP社はひそかに贋作製造すすめている。このあたりの人間関係と背景はややこしくなるが、JCに襲い掛かる危機また危機の連続は見る者を思考停止に追い込んでいく。特に、贋作工場で大勢の警備員を相手に単身大立回りを演じる場面は「燃えよドラゴン」に通じるところがあり、ジャッキーのカンフーアクションへの思いが伝わってくる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、NPO活動家による、植民地より奪われた美術・工芸品の返還を求める抗議運動が盛んになり、MP社の出品物がオークションでボイコットにあう。結局、ジャッキーが訴えたかったのは世界中に散逸した中国の文化財を中国が取り戻すことなのだ。かつて、ジャッキーは中国であって中国でなかった香港でスターになった。返還後15年、彼の中国人としてのアイデンティティとプライドは大きく成長し、それが前面に押し出されている映画でもあった。

オススメ度 ★★★

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