こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

プラチナデータ

otello2013-03-18

プラチナデータ

監督 大友啓史
出演 二宮和也/鈴木保奈美/生瀬勝久/杏/水原希子/遠藤要/和田聰宏/中村育二/萩原聖人/豊川悦司
ナンバー 64
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

DNAを解析し、人間の身体的特徴だけでなく精神や感情までプロファイリングする科学者は、自分自身のことがいちばんわかっていなかった。物語は、そんな主人公が疑われ逃亡し追い詰められてる過程で、警察組織による全国民登録システム計画のいかがわしさを追及する。国民はあらゆる段階でDNAサンプルを取られ、データベース化され、町中に設置されたモニターですべての行動が当局に筒抜けになる。もちろん犯罪の抑止力にはなるだろう、それ以上に他人に知られたくない秘密まで蓄積されているという、本人が知らないうちに個人情報が収集されていく得体の知れない恐ろしさ。人権がないがしろにされる陰鬱な近未来が寒色系の映像でスタイリッシュに描かれる。

DNAから事件の犯人像を絞り込むシステムを構築した神楽は、浅間が担当する殺人事件の犯人をたちどころに特定する。ある日システムの開発の中心人物・早樹が惨殺され、神楽は遺留物を分析するが、システムは犯人を神楽と示唆する。

逃走する神楽、追う浅間。監視カメラと人海戦術のマンハント、しかし神楽は警察の虚を突いて包囲網を破る。ところが、本来息をのむようなアクションシーンになるはずがぬる〜い駆けっこに終始し、凡庸なカメラワークはアイデアにもスピード感にも乏しい。神楽が操るバイクとパトカー隊のカーチェイスもあるが、そこでも手に汗握る緊張感とは無縁。謎を一つ解決すると新たな謎が現れるといったミステリーの仕掛けも貧弱で、低空飛行のままクライマックスを迎える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で神楽の育ての親でもあるDNA研究者・水上が己の野望を推進しようとするが、彼女は自らを“先駆者”と呼ぶ。だが、先天的資質の優劣で人間を分類したり交接でより優秀な子孫を残す考えは前世紀初頭に世界的に流行した優生学そのもの。後にナチスドイツが人種政策に利用した事実もあり、とても先駆者とは思えないが・・・。原作はもともと東野圭吾作品の中でも雑なほうだったが、はたして映画もそのレベルを超えてはいなかった。

オススメ度 ★★

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