こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

相棒シリーズ X DAY

otello2013-03-25

相棒シリーズ X DAY

監督 橋本一
出演 川原和久/田中圭/国仲涼子/田口トモロヲ/別所哲也/水谷豊/及川光博/木村佳乃/関めぐみ
ナンバー 70
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

国の借金残高は完全な危険水域にあり、日本経済はいつ崩壊してもおかしくない状態なのに国民に危機意識は希薄。そればかりか政府は震災復興財源に更なる補正予算案を通しそのツケを子孫に回す。さらにアベノミクスのミニバブルに踊り始め現実から目をそらす。物語は、そんな我が国にとどめを刺す衝撃のシナリオを暴露した男が殺された事件から起こる、警察内部のセクショナリズムと一刑事の正義の限界を描く。いまや警察もIT化が進み、証拠品の照合から上司への報告・説明、関係者への聞き込みなどあらゆる場面でタブレット端末が大活躍。特に刑事たちは常に手ぶらで外出するのに、主人公は時に訪問先でタブレット端末を取り出す。彼のジャケットの裏側はどんな構造をしているのか気になった。

日本国債破綻を予告したレポートをネット上に投稿していた銀行のシステム開発者の他殺体が発見される。捜査に当たった伊丹はサイバー犯罪捜査官の岩月とコンビを組まされるが、岩月の冷めた態度にいらだちを隠せない。

単なる殺人ではなく、ネット犯罪やヤクザまで絡み、更に国会議員や警察庁財務省などのエリートが陰で糸を引いている。複雑に入り組む人間関係の中で伊丹たちは次第に動きを封じられていく。刑事の信念と組織の一員としての立場の板挟みになる現場の捜査官たちの苦悩とともに、犯罪容疑者には居丈高に接する彼らが “キャリア官僚” という権力者の前では一斉にひれ伏す様は滑稽だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画は、燃やされた札束と宙を舞う1万円札に狂乱する民衆の姿を対比させ、貨幣制度とは国民と国の相互信頼の上で成り立っているのに、国が一方的に国民を裏切っていることを告発する。そしてネットの自由を奪う法案を通そうとする議員が「絶望の真実より希望の嘘に飛びつく人々」と言うように、政府はできる限り国民をだまし続けようとする。殺人犯は逮捕された、だが現状は何も変わらない。その後味の悪さこそ日本の未来を予見した警鐘なのだ。

オススメ度 ★★*

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