こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ローマでアモーレ

otello2013-04-06

ローマでアモーレ TO ROME WITH LOVE

監督 ウディ・アレン
出演 ウディ・アレン/アレック・ボールドウィン/ロベルト・ベニーニ/ペネロペ・クルス/ジュディ・デイヴィス/ジェシー・アイゼンバーグ/グレタ・ガーウィグ/エレン・ペイジ
ナンバー 81
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

壮麗な石造りの古代遺跡がいまだ人々の暮らしに密接している街・ローマ。恋に夢に仕事に、誰もがみな生きる楽しみを謳歌している。永遠の都を舞台に並行して進行する4つのストーリーは、無限に広がるウディ・アレンのイマジネーションを自在に反映させ、全く予想できない展開で見る者を甘美な陶酔に導いてくれる。さらに、皮肉とユーモアに満ちたセリフの数々は共感を呼び、珍奇なキャラクターが生み出すシチュエーションは哄笑を誘う。特にシャワーを浴びながら朗唱する「パリアッチ」は、オペラを題材にした過去のどんな映画よりも前衛的で衝撃的だった。

ローマを訪れたオペラ演出家のジェリーは、葬儀屋の美声にほれ込む。散策中の建築家・ジョンは建築を学ぶ学生・ジャックのロマンスに口をはさむ。田舎から出てきたばかりのアントニオとミリーの新婚カップルはお互い違う相手と関係を持つ。平凡なサラリーマン・レオポルドはある朝突然セレブになる。

望む望まざるにかかわらず、登場人物は劇的な運命の転機にさらされる。そこで彼らは流れに逆らわず心のおもむくままに身を委ねる。ジャックが女優の卵・モニカに籠絡されていく過程では、ジョンがジャックの若気の至りをたしなめるのだが、ジャックは聞く耳を持たない。このエピソードに代表されるように、必ずしもハッピーな結末を迎えるとは限らないが、少しだけ冒険してみようという気持ちが彼らの人生を豊かにし、幸福の量を増やしていく。シニカルだけれど優しい、そんなカメラの視点が心地よい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

また、ミリーの外出中にアントニオの部屋に乱入してきたアンナは、押し出しの強さと機転の持ち主。真っ赤なドレスとハイヒールのいかにもコールガール風の身なりのまま成り行き任せにアントニオの妻を演じ、彼に恥をかかせないように頭をフル回転させる。まさしく大輪の花のごとき存在感は、積極的かつ楽天的に物事にあたれば何事もうまくいくといったイタリア人的思考を象徴していた。欲を言うなら、彼女のキャラクターとオジマンデュアスうつ病のジェリーの“対決”が見てみたかった。

オススメ度 ★★★*

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