こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

海と大陸

otello2013-04-10

海と大陸 TERRAFERMA

監督 エマヌエーレ・クリアレーゼ
出演 フィリッポ・プチッロ/ドナテッラ・フィノッキアーロ/ミンモ・クティッキオ/ジュゼッペ・フィオレッロ/ティムニット・T
ナンバー 84
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人は他人のためにどれだけ己を犠牲にできるのか。救いを求めている者に手を差し伸べるのが違法行為とわかっていても行動に移せるか。良心と法の板挟みになった家族、映画は図らずもアフリカ難民を匿った彼らの苦悩と逡巡、そして愛と勇気を描く。開発から取り残された小さな漁業の島、自分たちが食べていくのも精一杯の生活の中で、プライドが高い漁師の祖父、反感と共感の相反する感情を抱く母、自ら責任を負う決断を迫られた若者の3人が一組の難民母子を守ろうとする姿は、人生に大切なものを教えてくれる。レジャーボートではしゃぐ観光客と小さな筏にひしめくアフリカ人、繁栄と貧困が隣り合わせの南地中海、その透き通る美しさは、主人公たちが抱える矛盾と葛藤を象徴しているようだった。

小島の漁師・エルネストの孫・フィリッポは、母・ジュリエッタと2人暮らし。現金収入を得ようとバカンス客に自宅を貸す商売を始める。ある日、エルネストとフィリッポは漁の最中にアフリカ難民船を発見、海に飛び込んだ妊婦と彼女の子をガレージに保護する。

無事出産した難民と彼女の子供たちに、ジュリエッタは迷惑顔を隠さないが、海の男の矜持からエルネストはあくまで彼らの味方。フィリッポは男らしく振舞いたいが母の気持ちも理解している。何をすべきか、何をしないべきか、3人は人間としての価値を試されていく。その過程で、マザコン気味で子供っぽかったフィリッポが徐々に大人の顔になっていく。誰かの役に立たなければと引き締まっていく表情がたくましく頼もしい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

後日、フィリッポは観光客を案内中に再び難民ボートと遭遇、すがりつく彼らを今度は追い払ってしまう。もちろん無条件に難民を受け入れては社会が混乱することは分かっている。これ以上警察に目を着けられたくもない。それでも、いま目の前のか弱い命を見捨てられるのか。理性ではなく心のままに走り出すフィリッポの若さゆえの正義感がまぶしかった。。。

オススメ度 ★★★

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